名大ら,LEDを用いたPM2.5計測装置を開発

名古屋大学゚とパナソニックは,共同研究により大気中の微粒子で2.5ミクロン以下の粒子径のもの(PM2.5)の小型かつ,比較的精度の高い簡便な小型計測装置の開発に成功した(ニュースリリース)。

開発したのは,光散乱法に基づく手のひらに乗るようなコンパクトでローコストなPM2.5計測装置。2.5μm以下の粒子の質量濃度を判定する独自の「粒径判別アルゴリズム」により,より高い精度での判定を実現した。空気清浄機への組み込みや,身近な多地点での観測により,PM2.5に対するきめ細かな対応が可能となる。

開発したPM2.5測定器には,粒子の光散乱を測定する光散乱法を用いている。この内部には,LEDを用いた光源,粒子が光源からの光を散乱して生じる散乱光の受光部,PM2.5粒子が測定器内部へ流入し,外部へ流出する流路部から成っている。

光源と受光部には集光用非球面レンズを設け,また,散乱光以外の迷光成分を効率よく閉じ込めて減衰させるための迷光トラップ構造を配置している。これにより,粒子からの散乱光のみを検出できるように高S/N比を実現して,非常に小さい粒子(0.3μmまで)の粒子の光散乱まで計測できるようにした。

また,PM2.5粒子の大気中に存在するほぼ全体の粒子径範囲,最小粒子径0.3μmから2.5μmをカバーすることができるようになった。装置のサイズは長辺で52mm程度と小型す。これまでのPM2.5粒子の計測器と比べると,1/10程度にコンパクトになっている。

PM2.5の環境基準は,質量濃度(μg/m3)の単位が用いられ,「PM2.5の粒子の濃度は1年平均値15μg/m3以下かつ1日平均値35μg/m3以下」というように定められている。そこで,粒子測定器としてPM2.5粒子の光散乱強度を,環境基準となっている質量濃度に換算する必要がある。

大きな粒子では,濃度がほぼ質量濃度に比例するため,換算は簡単だが,PM2.5のような微小な粒子では,粒子径が検出光の波長(約0.6μm)に近くなるになると,光散乱強度は急激に小さくなり,粒子の質量に比例しなくなる。したがって,光散乱強度から質量濃度を算出するのは,単純に比例計算では済まず,特に,微小粒子の寄与が過少に評価されてしまう。

そこで今回,粒子による光散乱強度から,質量濃度を算出する方法をより精密なものにした。1つずつの粒子による光散乱強度から粒子径を推定して,質量濃度を算出する新しいアルゴリズムを開発。また,高濃度領域においても高精度計測を可能とするため,独自のアルゴリズム技術を開発した。このため,600μg/m3の非常に高濃度まで測定できる。

開発した装置を,国や自治体で環境計測に用いている公定法である大型のPM2.5自動測定機とで同時に測定したところ,フィールド試験の相関係数Rとして0.82が得られ,高い相関性を有していることを実証した。

研究グループでは,より小さな粒子を検出できる装置の開発を行なっている。現在,環境基準の規制値として定められているPM2.5の質量濃度に対して,0.3μm以下の粒子はほとんど寄与しない。しかし,そのような微細粒子が健康に影響を及ぼすという報告もある。0.3μm以下の微小粒子の計測は非常に難しく,現状では数100万円の機器が必要になる。

研究グループでは,0.3μm以下の微小粒子をローコストで精度よく測定できるように技術開発を進めている。例えば,光散乱検出を光源として最近になって低価格になってきた波長300nm台のレーザやLEDを使用することにより,より微小な粒子の検出を目指している。

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