神大,担持した金属が光触媒を活性化する仕組みを発見

神戸大学の研究グループは,人工光合成に用いる光触媒に金属元素を加えることで,反応が活性化する仕組みの一端を解明した(ニュースリリース)。これまでの定説をくつがえすもので,今後より効率的な光触媒の作成に貢献することが期待される成果。

現在私たちが利用するエネルギーの多くは石油などに由来しており,近い将来枯渇することが危惧されている。人工光合成は,太陽光や水から化学エネルギーをつくり出し,従来のエネルギーに代替する手段として注目され,さまざまな研究が行なわれている。なかでも,天然に存在しない水素ガスを光触媒によって水から取り出すという手法が,45年程前から盛んに研究されている。

2000年には,日本の研究チームが最も効率的に水素を発生させるタンタル酸ナトリウム(NaTaO3)という光触媒を開発し,さらにこの光触媒にストロンチウム(Sr)やランタン(La)などの金属元素を数%加えると水素の発生効率が10倍に上昇することをみいだした。

金属元素を加えると反応が活性化する要因は,添加した金属元素が同程度の大きさをもつナトリウム(Na)の一部を置き換えることにあると想像されてきたが,これを確かめる研究はこれまで十分になされていなかった。

研究グループは,タンタル酸ナトリウムにストロンチウムを加えた化合物を二通りの方法で作成。その結果,ストロンチウムがナトリウムの一部と置き換わったものと,タンタル(Ta)の一部と置き換わったものの2種類の化合物が生成した。

2種類の化合物をラマン分光法により確認したところ,より効率よく反応をおこす光触媒は後者であることがわかった。これは,15年来の定説をくつがえす成果。

研究グループは,今回明らかにした仕組みが,より良い光触媒を作成する際の切り札となることに期待を寄せている。

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