NTTデータ,日本電信電話(NTT)およびロボット開発のヴイストンの3社は,さまざまなセンサやデバイスあるいは複数のロボットをクラウドを介して接続し,情報を収集・分析して人の状態や状況を理解し,新たな行動や気付きを促す「クラウド型マルチデバイスインタラクションサービス」の受容性・有効性の検証に関する共同実験を,7月28日より開始する(ニュースリリース)。
これまでのロボットは単体で完結する製品が主で,人間のような動きを求めて多数のアクチュエータなどを搭載するものが多かった。一方,今回の試みはロボットの役割をヒトとのコミュニケーションの起点とするもの。
そのためヴィストンが開発したロボット「Sota(ソータ)」は,移動のための足や車輪を持たず,胴体と腕,頭部を動かすアクチュエータと,カメラ,スピーカ,マイクそしてPCなど最低限のデバイスで構成されている。
今回実験が行なわれるサービスは,ユーザ周辺のインターネットに接続したセンサからの情報やSotaとの会話を通じ,クラウド(クラウドロボティクス基盤)上でユーザの環境や状況を判断し,高度な知的処理を行なうことで,例えば高齢者向けの見守りサービスや,子供向けのサービスなどを提供する。
実験では,ヴィストンがSotaの本体を担当するほか,NTTが開発したインタラクション技術「連舞」をNTTデータのクラウド上に実装する。連舞によってクラウド上で複数のデバイスを連携制御すると共に,サービスの開発をブラウザから簡単に行なうことができる。
発表会見ではサービスの例としてデモンストレーションが行なわれた。その内容は,Sotaがユーザに具合の悪いところを訪ねて状態を医師へ知らせたり,血圧を測るように促し,その結果に対してアドバイスを行なう健康管理や,外出の予定や天気を知らせたりするスケジュール管理など。
ユーザの情報の収集はSotaとの会話に加え,赤外線深度センサのkinectを用いて在室情報を取得し,照明やロボット掃除機を連携してコントロールする様子が紹介された。ほかにも,IoTのようにネットに接続できるセンサやデバイスならばサービスに取り込むことができるという。
3社は今後,展示会などでデモを行なうほか,介護施設で高齢者に対する健康管理のサポートや,日本科学未来館において子供の学習用途や迷子防止などの検証を行ない,要素技術の改善を行ないながらサービスの受容性・有効性を検証する。共同実験は2016年2月までの予定で,その中でビジネスモデルの構築なども検討する。
この試みについて3社は,人がロボットをパートナーとして接することができるか(受容性)が大きなカギになるとしている。NTTデータやヴィストンでは,これまでの実験などから人がロボットと愛着を持って接する事例を得ている。またSotaはロボットクリエイターの高橋智隆氏による親しみやすいデザインを採用している。
3社は実用化の可能性を見極めつつ,連舞の開発環境を公開して参入障壁を下げるなどして本格的なサービスの開始を目指す。
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