北大ら,高性能半導体PETで赤核の代謝活動を画像化

北海道大学と日立製作所は,高い空間分解能をもつ半導体検出器PET装置と診断薬剤であるF-18 FDGを用いて,脳の深部にある小構造である赤核の代謝活動を画像化することに成功した(ニュースリリース)。

脳の深部には神経核と呼ばれる小さな構造体が複数存在する。それぞれの神経核が重要な機能を担っているが,中でも生きたヒトでの赤核の機能は評価することが難しく,十分に解明されているとは言えない。脳の疾患に関わっている可能性を示唆する報告もあり,その機能を解明することは医学の発達に寄与すると考えられる。

神経機能を調べる上で,代謝を測定するポジトロン断層法(PET)は有用なツールだが,赤核は1cmと小さく,従来のPETの空間分解能では可視化は不可能だった。

そこで,研究グループは,半導体検出器を用いて空間分解能を向上させたPET装置を開発し,臨床応用してきた。その成果の一つとして,今回,赤核のブドウ糖代謝を測定した。

研究では半導体検出器によるPET装置と,フッ素18 標識のフルオロデオキシグルコース(FDG)を用いて,20人の脳のPET画像を撮影した。赤核の代謝を測定した上で,3D-SSPという技術を用いて統計解析し,赤核の代謝とよく相関する大脳皮質・小脳の部位を調べた。

その結果,20例全例で,赤核の代謝活動の画像化および測定に成功した。また,統計解析によって赤核が大脳・小脳のいろいろな部位と代謝相関があり,影響しあっていることが示唆された。赤核は運動機能を司る神経核として知られているが,今回,大脳皮質の運動野だけではなく「考える」「理解する」といった高次機能を司る連合野の多くの部位とも相関が認められ,赤核は高次機能にも関与している可能性が示唆された。

これまでは神経核のサイズが小さいためにPETでは測定できないとされてきた構造物が,高性能半導体PET装置を使えば測定できることが示された。今後,神経変性疾患や脳腫瘍などで赤核やその他の神経核の代謝が病気とどのように関係しているかを明らかにし,治療に結びつけていくために,高性能半導体PET装置は有用なツールだとしている。

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