大阪市立大学の研究グループは,太陽光エネルギーを利用し二酸化炭素から化学原料の一種である一酸化炭素を創り出すことのできる半導体の一種,光触媒材料「銀粒子担持酸化ガリウム」の機能を詳細に調べた結果,直径1nm前後の銀粒子を酸化ガリウムに担持した材料を用いることによって,光触媒機能が向上することを突き止めた(ニュースリリース)。
現在,人工光合成技術の一つとして,半導体の一種である光触媒を用いて二酸化炭素と水から一酸化炭素,水素,酸素を生成する技術開発が進められている。
通常,光触媒は太陽光エネルギーを利用し水を水素と酸素に分解するが,最近,いくつかの光触媒に銀微粒子を添加すると,水素生成に加えて二酸化炭素の還元に基づく一酸化炭素の生成が著しく促進されることが報告されている。
しかし,銀微粒子を添加するとなぜ一酸化炭素生成が促進されるか,その詳細が明らかになっておらず,より効率的に一酸化炭素を生成するためには,どのように銀微粒子を添加すれば良いかという具体的な指針も得られていなかった。
研究グループは,銀ナノ粒子を添加した酸化ガリウム光触媒を利用した人工光合成技術によって,二酸化炭素と水から,一酸化炭素,水素,酸素を生成する反応系の構築に取り組んでおり,特に二酸化炭素を還元して一酸化炭素だけを生成させる技術を目指している。
研究では,酸化ガリウム光触媒上の銀微粒子の構造を原子レベルで調べ,かつ,光触媒表面に二酸化炭素等の気体がどのような形で存在しているかを調べたところ,特に銀微粒子のnmスケールでの大きさによって一酸化炭素の生成機構が変化することを発見した。
一酸化炭素生成の反応中間体である「ギ酸塩」の生成が,酸化ガリウム上の直径1nm前後の小さな銀ナノ粒子の近くで促進され,一酸化炭素が効率的に生成していることが明らかになった。
このように一酸化炭素生成反応を促進させるのに有効な銀微粒子の具体的な大きさとその触媒反応への影響を明らかにした上で,これを触媒設計指針へフィードバックさせることは,より高効率な触媒の開発や希少資源の無駄のない有効利用へとつながる。
研究グループはこの成果が,いまだ経験やノウハウに頼るところの多い光触媒の調製において,合理的な触媒設計指針として光触媒の開発を加速させることを期待している。
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