JAMSTECら,CO2を地上と衛星から観測

海洋研究開発機構(JAMSTEC)と国立環境研究所(NIES)の共同研究グループは,主要な温室効果ガスである大気二酸化炭素(CO2)の地球全域に渡る吸収排出量について,地上・衛星観測データを用いた,異なる2つの最新推定手法を相互的に比較・評価し,北半球中高緯度地域においては信頼のできる推定を可能にした(ニュースリリース)。

CO2吸収排出量について,これまで生態学,数理学を基盤にした数値モデルによる推定評価が行なわれてきたが,このような観測データを用いた手法の評価は,世界で初の試み。

研究グループは,温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT衛星)が測定する大気CO2濃度からCO2吸収排出量を推定する手法と,CO2吸収排出量の地上観測ネットワークを機械学習モデルによって経験的に広域化する手法を用い,これら2つの手法が推定する近年のCO2吸収排出量の整合性を調査した。

GOSAT衛星は,太陽から放射され地表面で反射した赤外線や,地表や大気自体から放射される赤外線のスペクトルを宇宙で観測する。赤外線は,温室効果ガスを透過する際に特定の波長が吸収されるが,GOSAT衛星はこの原理を用いて,大気中の温室効果ガスの濃度を算出することができる。

研究の結果,北半球中高緯度域において,2つのCO2吸収排出量の推定が非常に高い整合性で合致することが判明した一方,熱帯域において,大きな違いがあることが明らかになった。

GOSAT衛星による推定に比べ,地上観測ネットワークによる推定では,熱帯域のCO2吸収量を過大に推定する傾向にあり,これは,熱帯域での地上観測が不足していることから生じると考えられる。この結果は,熱帯域の地上観測ネットワークを充実させることが,今後のCO2吸収排出量の正確な把握につながることを示唆するもの。

地球温暖化などによる気候変動の将来予測においては,陸域におけるCO2吸収排出量の把握が重要であるとされている。今回の成果は地球温暖化などによる将来の気候変動予測の際のデータとしても利用が可能で,予測精度の向上に貢献できるとしている。

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