産総研,マイクロ液滴の混合メカニズムを観察

産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは,エレクトロニクス製造に向けた先進印刷製造技術の基盤として,インクジェット印刷法で形成される異なるマイクロ液滴が接触した際に示す,強い表面張力に支配された特異な混合メカニズムを明らかにした(ニュースリリース)。

産総研では,プリンテッドエレクトロニクスの実現を目指し,印刷法による電子デバイスの形成に適した電子機能性材料と新しい印刷プロセスの開発・高度化に取り組んでおり,これまでに,有機半導体の高均質な薄膜パターンを形成できるダブルショットインクジェット印刷法を開発した。

この技術は,材料を高濃度に溶解させたインクと,材料を溶かしにくいインクを混合し材料の析出を制御するが,その高度化には,異なるマイクロ液滴どうしの混合メカニズムを解明することが鍵になるとして,異なるマイクロ液滴が混合する様子を系統的に調べて今回の成果を得た。

研究ではインクジェット法により,それぞれ異なる液体の固着液とマイクロ液滴を形成し,それらが混合する様子を,高速度カメラ付き顕微鏡を用いて詳細に調べた。実験では混合可能な液体の組み合わせからなるマイクロ液滴と固着液の混合を系統的に調べた。

その結果,液体の組み合わせや体積などにより,『ぬれ』『はじき』『しずみ』の3種の挙動が見られることが分かった。一見大きく異なるこれらの現象は,いずれも2種の液滴間の表面張力差によって生じた,マイクロ液滴に特有な現象であり,インクジェット印刷法によって高均質な薄膜を形成する上で重要となる。

産総研では今後,異なるマイクロ液滴の特異な混合メカニズムに関する知見を活用し,インクジェット印刷法による半導体の印刷製造条件の最適化を図ることにより,半導体デバイスの高性能化と安定性向上を図る。また金属配線や誘電体などの印刷製造技術と組み合わせて,全印刷法による高性能の電子デバイスの試作に取り組むとしている。

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