東大ら,「時間結晶」が不可能であると証明

東京大学とカリフォルニア大学バークレー校は,フランク・ウィルチェック教授(Frank Wilczek,マサチューセッツ工科大学教授,2004年ノーベル物理学賞受賞)が,2012年に物質の新しい状態の可能性があることを理論的に提案した「時間結晶(time crystal)」について,統計力学の原理に従う限りその実現は不可能であることを数学的に厳密に証明した(ニュースリリース)。

多くの物質を冷却すると結晶が自発的に生じるため,自然界には多くの結晶が存在する。結晶の中では原子が周期的に規則正しく並んでおり,液体や気体と違って場所によって物質の密度が異なることになる。

これを一般化して,ノーベル賞物理学者のウィルチェック教授は,たとえば物質の密度が時間によって周期的に変化するような状態が自発的に生じる可能性を理論的に提案し,時間結晶と名づけた。

時間結晶が実現すれば物理学史上でも画期的な発見と考えられ,この理論は多くの注目を集めた。しかし今回研究グループは,統計力学から導かれる安定な物質の状態では,巨視的な物理量が時間的に変化することはないことを数学的に証明した。

具体的には,統計力学により導かれる安定な物質の状態(平衡状態)で巨視的な物理量の時間相関関数を評価し,厳密な不等式を用いてこれが時間的に振動することはないことを数学的に証明した。

このことは,ウィルチェック教授の提案した時間結晶は実際には存在しないことを意味する。この研究は物理学の基礎に対する重要な寄与であり,また時間と空間の意味を考える上でも一つの手がかりになるものだとしている。

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