自治医科大学と中央大学の共同研究グループは,光を用いた無侵襲の脳機能イメージング法である光トポグラフィを利用して,注意欠如・多動症(ADHD)の中心症状(落ち着きがない・待てない)を個人レベルで可視化することに成功した(ニュースリリース)。
定型発達児がもつ多動・衝動性は,「子供らしさ」と表現されるが,ADHDにおいては「病的な症状」に分類される。従来のADHD診断と治療効果の検討は行動観察が中心であり,しばしば「子どもらしさ」と「症状」の判別が困難だった。
その結果として,「気づきのおくれ」につながり,学習の遅れや引きこもりなど,さらなる問題を生じる可能性が高まってしまう。このため,ADHDの症状を判別するための客観的な手法が求められてきた。
今回の実験では,6歳から14歳のADHD児30名・定型発達児30名に,行動抑制ゲーム(Go/Nogo課題)をさせた。これは「落ち着きがない,待てない」というADHDの症状を計るのに適した課題で,ゲームの長さは約6分間。この際に,行動抑制ゲーム施行中の脳活動変化を,光トポグラフィ(日立メディコ・ETG4000)によって計測した。
この検査の結果,定型発達児の右前頭前野で脳活動の上昇がみられたが,ADHD児ではみられなかった。右前頭前野は,行動抑制機能に最も関与するといわれる領域。
そこで,脳活動変化を反映する酸素化ヘモグロビン値に「基準値」を設定したところ,ADHD児を感度・特異度ともに80%以上という高い精度で判別できることを確認した。
感度80%とは,10人のADHD児がいたとしたら,その内8人を見逃さずに検出できるという意味。特異度80%とは,ADHDでない児童が10人いた場合,そのうち8人をADHDでないと判別できるという意味。
研究グループでは,今後はこの計測システムをより使いやすいものにするとともに,実際の診断での使用できるかどうかを慎重に判断するために,より大規模な調査をおこなっていくとしている。
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