岡山大,存在が否定されていた固液臨界点を発見

岡山大学の研究グループは,カーボンナノチューブ内部に閉じ込められた水の挙動を分子シミュレーションで解析し,氷と水の区別がなくなる新たな臨界点(固液臨界点)が存在することを世界で初めて明らかにした(ニュースリリース)。

これまで,固液臨界点はいかなる物質に対する実験でも見つかっておらず,理論的にも存在が否定されてきた。今回,研究グループは,カーボンナノチューブ(直径約1ナノメートル)に内包された水をシミュレーションで再現。広範囲の温度・圧力条件下で水の固液相転移挙動を追跡し,分子レベルでナノチューブ内の水の運動と構造を解析した。

その結果,密度ゆらぎおよび比熱の発散傾向など,固液臨界点の存在を強く支持する複数の証拠を提示。固液臨界点の存在を示すことに成功した。さらに,様々な温度,圧力,ナノチューブ直径における水の状態(相),相境界,臨界点をまとめた相図を完成させた。

今回研究グループは,固液臨界点を6個確認。ナノチューブ内部の水においては,固液臨界点が珍しいものではなく,実際に観測される可能性が高いことがわかった。

氷と水の区別がなくなる臨界点では,密度やエネルギーゆらぎが大きくなったり,水を内包したカーボンナノチューブの熱伝導性が急激に変化することが予想される。今後,ナノ空間内部の物質について理論計算とナノテクノロジーを駆使した実験が展開され,様々な物質で固液臨界現象が発見される可能性があるという。

研究グループはさらに,①密度やエネルギーゆらぎを利用した新たな化学反応の開拓,②ナノチューブの熱伝導率を内包物質の相転移により制御する新技術開発 などが大いに期待されるとしている。

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