東工大ら,亀裂進展がセラミックスを強靭にすることを発見

東京工業大学と独電子シンクロトロン研究所の研究グループは,1μm以下のわずかな亀裂進展で,セラミックスが割れにくくなることを突き止めた(ニュースリリース)。

二酸化ケイ素の高圧相であるスティショバイトを集束イオンビーム加工した微小試験片を用い,靭性(割れにくさ)が急激に増すことを見出した。スティショバイトの高靭性の起源は「破壊誘起アモルファス(多結晶)化」だが,この仕組みが 1μm以下の領域でも働くことを明確に示した。

セラミックスは硬いが,小さな傷(亀裂)から割れて破壊する脆(もろ)さがある。強度を保つためには,亀裂は小さくなければいけない。一方,破壊に対する抵抗性(靭性)は亀裂が進んで長くなるほど増す。

このため,硬さと高強度を両立したセラミック材料を実現するには,亀裂がわずかに進むだけで靭性が大きくなる仕組みを見つけなければならない。しかし,これまでに知られている仕組みでは,靭性を増すためには亀裂が数μmから数十μm以上進む必要があった。

今回,亀裂が 1μm以下のわずかな距離を進むだけで破壊抵抗が上昇することが見出され,硬くて脆いセラミックスを丈夫にする新しい仕組みが存在することが明らかになった。この発見は微小試験片による破壊抵抗測定技術の進歩により初めて可能になった。

この技術を応用して,複雑なナノ構造,サブミクロンスケールの構造をもつセラミックスやナノコンポジットに適用すれば,さまざまな未知の靭性強化機構が見出される可能性がある。研究グループでは,高強度・高靭性セラミックスの研究開発に新たな飛躍と展開をもたらすと期待している。

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