茨城大学など,大学と研究機関の共同研究によって展開している「全日本VLBI」が,長野県の野辺山宇宙電波観測所内の2台のミリ波望遠鏡を用いて,日本で初めて230GHzという高い周波数での電波干渉計実験に成功した(ニュースリリース)。
これは,これまで日本のVLBIで実現していた周波数(86GHz)の約3倍の成果で,これにより,今後より高い解像度でブラックホールを観測し,その存在証明につながることが期待されるもの。
「VLBI」とは,離れた場所にある電波望遠鏡に届く星の電波を干渉させる「超長基線干渉計」という技術。望遠鏡が離れるほど,また,電波の波長が短い(周波数が大きい)ほど解像度が高くなる。日本では,国立天文台などの研究機関や茨城大学宇宙科学教育研究センターなどの大学を中心に発展を続けてきた。
今回の実験は。山口大学時が率いる形で,国立天文台,宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所,情報通信研究機構,大阪府立大学,茨城大学,京都大学で実現した。茨城大学は主に,VLBI観測に必要な高精度な時刻を発生する装置(1億年の1秒の精度)の一部の準備,現地における試験観測結果の評価(周波数が正しいかを確認)を担当した。
これまで日・米・欧・台の国際研究チームによる「事象の地平面望遠鏡」(EHT)が230GHzでの観測に成功しているが,今回はそれと同等の性能を日本国内で実現したもの。今後,日本国内の望遠鏡がEHTと協力して観測を行なえば,世界最高の解像度でブラックホールの撮像に挑むことも可能になるとしている。
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