理化学研究所(理研),高輝度光科学研究センター(JASRI)はX線自由電子レーザ(XFEL:X-ray Free Electron Laser)施設SACLAの新しいXFELビームライン「BL2」の共用運転を,2015年4月17日に開始した(ニュースリリース)。これによってSACLAは,複数のXFELビームラインが同時に稼働する世界初の施設となった。
SACLAは2012年から,XFELビームライン「BL3」の共用運転を行なっている。BL3は世界最短波長である0.1nm以下のX線レーザを安定的に供給し,数々の目覚ましい成果を生み出してきた。しかし,世界で共用運転を実施しているXFELビームラインはSACLAのBL3と米国のLinac Coherent Light Source(LCLS)が有するビームラインの2本だけであった。
XFELビームラインの不足は世界共通の課題であり,国内外の大学や研究機関,産業界の利用者はXFELの利用機会の拡大を強く要望していた。この課題を解決するため,理研とJASRIはSACLAにとって2本目の共用XFELビームラインとなるBL2を,2013年度から整備してきた。
BL2は,2014年10月8日に調整運転を開始し,その直後の10月21日にはレーザ発振に成功している。レーザ発振後も出力を高めるための精密調整を続け,2015年4月16日には1パルスあたり100μJを超える高い出力を実現した。2015年4月17日には,BL2による初めての利用研究課題として,理研の研究グループが実験を行なっている。
新たに稼働したBL2は,XFEL利用研究の重要ターゲットの1つである生物科学分野における利用を想定している。世界で初めて複数のXFELビームラインが同時に稼働する施設として,既存のBL3とBL2を効果的に運用することでXFELの利用機会が飛躍的に増加し,学術・産業の発展に一層貢献することが期待される。