東大生研公開, 6月5日/6日に開催

東京大学生産技術研究所(生研)は, 6月5日(金)と6日(土)の2日間,研究内容を一般に公開する「東大駒場リサーチキャンパス公開」を開催する。これに先だち,東大側がテーマ別にアレンジした研究室を巡る「ガイデッドツアー」が実施され,記者も参加してきた。

参加したツアーは 「ものづくり最前線 Bコース」。 おもに樹脂などのソフトな材料やデザインを取り扱う研究室の研究内容を紹介するコースで,梶原研,横井研,新野研,山中研を順にまわった。

最初の梶原研では「ものづくりとは直接関係ない」としながらも,パッシブ型テラヘルツ近接場顕微鏡が紹介された。これは試料から出る電荷や電流の熱ゆらぎをプローブで観察するもので,空間分解能は20nmを実現している。

もう一つの研究が異材接合で,樹脂と金属を接着剤などを使わずに接合する。樹脂と金属はそのままでは着かないが,金属側の表面をレーザや薬剤,サンドブラストなどで荒らして樹脂を流すと,主にアンカー効果によって接合することが分かっているという。

ただし,それ以外にも接合原理が働いているとみられ,これを完全に解明することが産業への応用につながることから,様々に条件を変えて接合強度などを試している。今回はデモも行なわれ,アルミと樹脂を接合するところを目の前で見せてもらえた。

梶原研HP

次にまわった横井研は,射出成型で金型の内部に樹脂が流れる様子を可視化する研究をしている。射出成型においては,金型内部での樹脂の流れが離型や品質に大きな影響を及ぼすが,そのシミュレーションには現象の可視化が必須となる。

そこで横井研では金型に窓を開け,窓を取り付けることによって金型内部の流れを見ようとしている。ここでもデモが行なわれ,金型に樹脂を流し込む様子を窓の外からハイスピードカメラで撮影し,スローで再生しながら解説が行なわれた。

また,同研究室では樹脂だけではなくパルプを使った射出形成の研究もしており,一部は商品化しているという。実際に射出成型した,ダルマや各種ケースなども展示されている。

横井研HP

新野研ではMID(Molded Interconnect Device)とAM(Additive Manufacturing)の研究を見ることができる。MIDとは,射出成形品に電気回路,電極,パターンなどを形成した回路成形部品。同研究室では微細な内管水路などを犠牲材料によって作るプロセスを研究しており,実際にLEDの基板内部に冷却水管を作ることに成功している。

AMについてはレーザを使った積層造形の研究が中心となっている。その中でも焼結によって材料が縮むことによって発生する,反りを抑える研究が紹介された。また粉面の温度を下げることで,樹脂材料の場合これまで不可能だった使わなかった材料の再利用を可能にし,システムと材料のコストを大きく下げたいとしている。

ここでは実際に3台の研究室が開発するAMマシンが稼働しており,立体形成をする様子を見ることができた。

新野研HP

最後の山中研は,工業デザインを専門とする東大生研でも異色の研究室で,日産自動車出身の山中俊治教授が教鞭をとっている。山中教授は「デザイナーと社会のかかわり方」「製造技術と人とのかかわり方」を求め,「もっとマイノリティに目を向けたデザイン」を一つの解として「義足」をデザインしている。

義足はどうしても機能性や生産性に重点が置かれたこともあって,プロダクトとしてのデザインは優先されてこなかった。その中で,もっと美しく,それまでのイメージを覆すような義足をデザインし,実際に義足を女性アスリートに使ってもらいながら研究を重ねてきた。

このプロジェクトには先の新野研も協力し,AMでしかできない複雑な形状を持つ義足を作成している。これら山中教授がデザインしてきた数々の義足を,大学内のギャラリーにて行なわていれる展覧会「Dsigning Body 美しい義足をつくる」展で見ることができる。

山中研HP

キャンパス公開では他にも多くの世界最先端の研究を見ることができる。目的を持って行ってもいいし,ふらりと尋ねるだけでも新しい発見があるかもしれない。生研では一体何が研究されているのか,この機会にちょっと覗いてみてはいかがだろうか。

東大駒場リサーチキャンパス公開2015