東大ら,量子もつれが時空を形成する仕組みを解明

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)と米カリフォルニア工科大学の研究グループは,双方の分野の連携により,一般相対性理論から導き出される重力の基礎となる時空が,さらに根本的な理論の「量子もつれ」から生まれる仕組みを具体的な計算を用いて解明した(ニュースリリース)。この研究成果は,一般相対性理論と量子力学を統一する究極の統一理論の構築に大きく貢献するもの。

世界には,現在,「電磁気力」「強い力」「弱い力」そして「重力」の4つの力が存在する。しかし,これらの力は宇宙がはじまった当初は一つの力としてすべて統一されていたと考えられており,力の統一について物理学の実験や理論の側面からさまざまな研究がなされてきた。現在のところ,ミクロの世界を記述する量子力学を基礎とした理論を用いて,「電磁気力」「強い力」「弱い力」の3つの力を説明できることが分かっている。

一方,天体の動きや宇宙の進化などマクロな世界での現象はアインシュタインの唱えた一般相対性理論で上手く説明できる。この時,重力は3次元の空間と1次元の時間とをまとめた4次元の時空の性質に帰すことで説明される。しかしながら,ミクロな世界の現象は量子力学で説明されており,重力も含めて一つの理論で統一的に説明するためには重力もまた量子化される必要があるとされてきた。

そうした,一般相対性理論と量子力学を統一する理論を構築する上でホログラフィー原理が重要であることが分かっている。ホログラフィー原理ではミクロな世界での重力を,重力を含まない量子力学の問題として説明することができる。それにより,重力現象,さらにはその基礎となる時空自身さえも,重力を含まない理論から量子効果によって生まれるとされる。しかし,量子効果から時空が生じる仕組みはよく理解されていなかった。

物理学者と数学者からなる研究グループは,量子効果から時空が生じる仕組みの鍵は量子もつれであることを見出した。特に,エネルギー密度のような時空の中の局所データが,量子もつれを用いて計算できることを示した。

量子もつれとは,異なる場所にある粒子のスピンなどの量子状態が独立に記述できないという現象で,アインシュタインは「奇怪な遠隔作用」と呼んだ。今回の成果はこの量子もつれという現象こそが重力現象の基礎となる時空を生成するということを示したもの。

量子もつれは,ブラックホールの情報問題や防火壁問題など,一般相対性理論と量子力学の統一に関する深い問題と関わっていることが知られていた。今回の論文は,この量子もつれの現象と時空間の微視的構造との関係を,具体的な計算で明らかにしたもの。研究グループは量子重力の研究と,情報科学との連携は,今後ますます重要になると考えられるとしている。

一般相対性理論から導き出される重力現象の基礎となる時空がさらに根本的な理論の「量子もつれ」から生まれる仕組みを解明した今回の成果が,一般相対性理論と量子力学とを統一する理論の構築に向けた研究の前進に大きく寄与すると期待される。

関連記事「NICTら,量子もつれ交換技術を1,000倍以上高速化」「NICTら, 量子通信における量子もつれ光子対の生成効率を30倍にすることに成功」「NTT,約100万個の原子に対して大規模な量子もつれ状態を高精度かつ高速に生成することに成功