NIMSら,常温常圧でエタノールから電力を取出す触媒を開発

物質・材料研究機構(NIMS)と東北大学は共同で,常温常圧のエタノール燃料から有毒排気ガスの発生を伴わずに効率よく電力を取り出すことができる新しい触媒材料「TaPt3(タンタルプラチナ)ナノ粒子触媒」の開発に成功した(ニュースリリース)。

エタノール燃料はサトウキビやトウモロコシなどバイオマスを発酵して生産できるため,化石燃料に代わる再生可能エネルギー源として有望視されている。

しかしながら,ディーゼルエンジンなど内燃機関でエタノール燃料を使用する際には,数百℃の高温で空気と燃料を反応させる過程が含まれるため,毒性排気ガス(NOx・CO)の発生が避けられない。そこで,内燃機関での利用に代わり,常温近傍で動作するポリマー電解質膜燃料電池(PEMFC)での利用を目指した研究が進められている。

だがPEMFC用燃料としてエタノールを利用する際に,エタノールが持つ炭素-炭素結合が問題になる。従来のPEMFC電極触媒は,エタノール分子の炭素-炭素結合を効率よく切断することができないため,エタノール分子に含まれる化学エネルギーを利用し尽くすことはできなかった。

今回研究グループでは,タンタル(Ta)とプラチナ(Pt)を組み合わせた新触媒「TaPt3ナノ粒子」を開発した。この触媒を用いると,常温・常圧の水中において効率よくエタノール分子の炭素—炭素結合を切断できることを確認した。さらにTaPt3ナノ粒子触媒は,炭素-炭素結合を切断した結果発生する,人体に有害な一酸化炭素を,無害な二酸化炭素まで完全に酸化できることが分かった。

このように,今回開発した触媒を用いることで,従来の触媒に比べて10倍以上の電流密度を達成し,毒性排気ガスの発生を伴うことなくエタノール燃料から効率よく電力を生みだすことが可能となった。研究グループはTaPt3ナノ粒子が,バイオマス燃料技術との協働によって,カーボンニュートラル社会実現へのブレイクスルーを果たすと期待している。

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