古河電気工業は,世界的に旺盛な光ファイバおよび光ケーブルの需要にフレキシブルに対応すべく,海外向け事業体制を再編する。海外グループ企業や事業部間を統括・補完する「ソリューション&システム部」を新設したほか,海外子会社の生産能力を増強を進める。
具体的には光ケーブル事業について,昨年8月に中南米を中心に展開するFISA(Furukawa Industrial S.A.Produtos Eletricos)がコロンビアに拠点を設立したのに続き,今年3月にはOFS(OFS Fitel, LLC)がロシア工場の光ケーブルの生産能力を倍増した。さらにOFSは2016年には北アフリカにも拠点を設立し,同年3月には稼働を開始するとしている。
アフリカへの本格的な進出はファイバメーカとしては初めてのことで,いち早い拠点の設立によって,今後成長が期待されるアフリカでのプレゼンスを向上したいとしている。また,この進出によって同社は世界の主だった地域での供給体制が整うことになる。
一方,光ファイバ事業でも,国内の三重事業所(三重県亀山市)では生産プロセスの改良によって生産能力を20%向上することに成功したほか,米国OFSでは需要が好調な欧米市場向けの生産合理化を図る。またブラジルのFISAやインドのBFFO(Birla Furukawa Fibre Optics Limited)でも増産を実施して供給能力を高めている。
同社が事業の再編を急ぐのには,国内での光ファイバ市場が頭打ちである一方,海外市場では逆に需要が旺盛なことにある。世界の光ファイバ市場について同社は年間約3億kmと試算しており,これが今後数年間は継続すると見ている。このうち,これまで全体の約50%を占めてきた中国は投資が一巡して今後は後退局面に入るものの,その分を中東・アフリカやインドがカバーすることで,世界需要はこの勢いを持続するとしている。
同社は光ファイバ母材のプリフォームの出荷もしいていることから,一概に言うのは難しいとしながらも,光ファイバ市場において10%前後のシェアを握っていると推測している。今後,こうした計画によって,2018年には現在よりも30%ほど生産量を増やす。また,同社の現在の国内外の売上比率は,光ファイバ長ベースで既に2:8と大きく海外に比重を置いているが,これも2018年にはさらに海外向けへとシフトさせたい意向だ。
また,デジタルコヒーレント技術が長距離だけではなく,中距離向けにも使われ始めていることや,データセンターが急激に増加していること,またFTTxが世界的にさらなる普及を見せていることなど,今後はこれまでの基幹系だけではなく,データセンターを含めたメトロ系やアクセス系を意識したビジネス展開が重要になると見ている。
特にFTTxにおいては国や地域によって方式が起きく異なるため,小回りの利く体制が必要となる。こうした需要に応えるためには現地と密着したビジネス展開が重要であり,今回の世界戦略での重要なポイントだとしている。同社では光ファイバだけではなく,周辺機器や部品も含めたトータルなソリューションをワンストップで提供する体制を整えたいとしている。
同社では世界最大の有効断面積153㎛2を持つ基幹系SMファイバ「Tera Wave ULA」および,世界最小の曲げ半径2.5mmを誇る宅内配線向けSMファイバ「EZ-Bend」などを主力製品として,今後,成長市場でプレゼンスの向上を図ると共に,継続的なコストダウンと生産能力の増強によって競争力を確保し,Tier 1サプライヤとして市場をリードしていきたいとしている。(文中図表:古河電気工業提供)