第7回レーザー学会産業賞が決定

4月23日,第7回レーザー産業賞の受賞者が発表され,光技術総合展示会「OPIE’15」会場内にて表彰式が行なわれた。

この賞は,一般社団法人レーザー学会の賛助会員が開発・実用化した製品・新技術について,レーザーおよび光関連産業を通じて社会の発展に貢献する優れたものに対して贈られる。優秀賞,奨励賞,貢献賞があり,開発技術の独自性や有用性に加えて販売実績や将来性なども含めて総合的に評価される。今回の受賞者は以下の通り。

優秀賞
㈱フジクラ
「4kW出力連続波ファイバレーザーをはじめとするファイバーレーザー製品群」
三菱電機㈱
「遠隔からの風計測が可能な1.5mm帯コヒレント・ドップラー・ライダー装置」
パナソニックヘルスケア㈱
「PDレーザBT(悪性脳腫瘍に対するPDT用レーザ装置)」

奨励賞
ウシオ電機㈱/NecselIntellectualProperty,Inc.
「超大型プレミアムシアタープロジェクター用光源 グリーンネクセル」
㈱日立製作所/㈱日立ハイテクノロジーズ/㈱日立国際八木ソリューションズ
「ウエアラブル光トポグラフィ技術の開発と産業応用」

貢献賞
㈱ファーストメカニカルデザイン
「高性能ミラーマウント(MM1000S)」
㈱オキサイド
「スペックルコントラスト測定装置Dr.SPECKLE」



フジクラは海外製品が殆どのファイバレーザにおいて,出力4kWのCWレーザを筆頭に,300Wの空冷CWレーザ,75Wのパルスレーザなどをラインナップする。同社はファイバレーザ事業が軌道に乗ってきたところだとして,「海外に比べて劣っていると言わざるを得ない日本のレーザ製品だが,このファイバレーザで日本の産業界に貢献したい」とした。

三菱電機のコヒレント・ドップラー・ライダー装置は1998年より開発を開始し,2005年に製品化したもの。そのご改良を加えて2012年には世界最長となる34kmの観測距離を達成した。最近では,ヨーロッパの風力発電での導入基準をクリアし,乱気流監視用として羽田空港にも導入されるなど,事業手的にも立ち上がってきている。同社は今後とも,レーザを用いて「安心・安全社会の実現と,クリーンエネルギーの普及に貢献したい」としている。

パナソニックヘルスケアのPDレーザBTは,レーザで薬品に化学反応起こし,腫瘍細胞を選択的に攻撃する技術(Photodynamic Therapy :PDT)を用いた悪性脳腫瘍の治療装置。悪性脳腫瘍は,正常細胞と腫瘍細胞との境目がはっきりせず,それまで1年生存率が60%程度と予後が悪い疾病の一つとして知られている。同社は2009年から3年間,27名の悪性脳腫瘍患者に対してこの装置による治験を実施し,1年後の生存率100%という成績を収めた。2013年に薬事承認を得て,2014年からは治療にも適用され,治験と同様の成果を得ているという。同社はこの装置の他の部位への応用を進めており,間もなく新製品が出るとしている。

同賞は年々産業界において認知度が上がってきていることから,今回も高い競争率があり,選考は困難を極めたという。今後,この賞が日本の光製品のレベルを牽引する指標となることが予想される。来年度以降の受賞製品にも注目したい。