東北大,チタン酸ナノワイヤの高効率作製に成功

東北大学の研究グループは,チタンアルミ合金をアルカリ水溶液(水酸化ナトリウム)に室温で浸漬するという非常に簡便な手法により,極めて細いチタン酸ナノワイヤを高効率で作製することに成功した(ニュースリリース)。

カーボンナノチューブやシリコンナノワイヤなどに代表される一次元ナノ材料は,ナノサイズに特有な優れた機能性を発現することが知られている。中でもチタン酸化合物は,優れた誘電特性や半導体特性,光触媒活性など様々な機能を有する優れた材料であり,そのナノワイヤはこれまで水熱合成法やゾルゲル法などにより合成されてきた。

しかし,作製過程の熱処理に伴い結晶成長が進みワイヤ径が拡張することが知られており,比表面積を向上させるため更に細いワイヤの合成法の開発が期待されていた。

今回研究グループは,チタンアルミ合金を出発原料として,これを水酸化ナトリウム水溶液に浸漬する極めてシンプルな方法により,チタン酸ナトリウムナノワイヤを高収率で作製することに成功した。この作製法は直径の増大をもたらす熱処理が不要であるため,これまで作製されたナノワイヤに比べ,直径が数ナノメートルという極めて細いナノワイヤを作製することが可能になった。

得られたナノワイヤは無数に絡み合ってマリモのような特徴的な集合体をつくり,これを更に拡大するとナノワイヤが生成していることがわかる。このナノワイヤの結晶構造は,X線構造解析法や高分解能透過電子顕微鏡法により,ナトリウム原子層が酸化チタン層にサンドイッチされた層状構造であることを明らかにした。

層状構造を有する金属酸化物は,イオン交換によって様々なイオンを吸着することが知られており,特にチタン酸ナトリウムは,放射性ストロンチウムイオンの吸着材として研究が進められている。今回作製したナノワイヤーの吸着能を評価したところ,従来の材料と比べてより多量のストロンチウムイオンを吸着することが可能であり,なおかつイオン交換速度が極めて速いことを明らかにした。

研究グループは今後,海水など様々な金属イオンを含む条件でストロンチウムイオンを選択的に吸着するかどうかを検証する実験を行なうなど,実用化に向けた取り組みを進めていくとしている。

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