NIFSら,「水の窓」領域の軟X線発光スペクトルを観測

核融合科学研究所(NIFS)と宇都宮大学をはじめとする共同研究グループは,候補材料となる元素を封入したペレット(小球)を核融合研究用の大型ヘリカル装置(LHD)の高温プラズマに入射し,「水の窓」領域の軟X線発光スペクトルを観測した(ニュースリリース)。

生きた細胞の観察には一般に光学顕微鏡が使われるが,光学顕微鏡より数十倍高い解像度を持つ「軟X線顕微鏡」が生命科学の分野で注目を浴びている。軟X線は,レントゲン検査で使うX線よりも波長が長く,紫外線に近い。そして軟X線は波長が変わると,元素によって透過しやすさが変わることが知られている。

例えば,酸素に対しては波長が2.3nm以上で透過しやすくなり,炭素に対しては4.4nm以上で透過しやすくなる。つまり波長が2.3から4.4nmの間では,水分子を構成する酸素にはほとんど吸収されない反面,細胞を構成する炭素に強く吸収されることになる。

この性質を利用すると,培養液に入った生きた細胞組織の内部構造を高いコントラストで観察できる。このことから,この波長領域は「水の窓」と呼ばれ,「水の窓」領域の軟X線を光源とした顕微鏡が精力的に開発されている。例えば,宇都宮大学では,ビスマスやジルコニウムといった原子番号の高い元素にレーザを当ててプラズマ化し,「水の窓」領域の軟X線を発光させることを提案している。

光源を高輝度・高効率化するためには,プラズマからの発光スペクトルを精度良く調べる必要があるが,光源を高輝度・高効率化するためには,プラズマからの発光スペクトルを精度良く調べる必要があり,今回の実験を行なった。その結果,プラズマ中のジルコニウムイオンからの波長が2.8nmの強い発光スペクトルを初めて観測した。これは明らかに「水の窓」領域の軟X線となる。

今回LHDで得られたデータは,今後レーザを用いた光源開発や顕微鏡システムの設計に生かされるとしている。

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