2020年,映像技術が変わる?-URCFがデモ展示を開催

 東京オリンピック・パラリンピックの開催まで5年。2020年までに,これまで培った技術開発の成果がどのようなかたちで発展するのかが注目される。

こうした中,映像の取得から伝送・表示まで最先端の技術を研究・開発する企業,大学,研究機関が参画する超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(URCF)が4月8日,東京工業大学キャンパスイノベーションセンター(東京・田町)において,2020年東京オリンピックに向けたデモ展示を開催した。

■パナソニックの次世代プロジェクション技術

パナソニックは,リアルタイムで高速の動体を追従するプロジェクションマッピングシステムを開発している。プロジェクタと赤外線センサを組み合わせたもので,超低遅延システムとしている。例えば,サッカーなどで選手の動きやボールを追従し,情報を表示するといった表現を可能にする。

■パイオニアのシースループロジェクションディスプレイ

パイオニアは透明なスクリーンに,プロジェクタで映像を投影する透過型ディスプレイシステムを開発している。デモはリアプロジェクション方式で85%の透過率を持つガラス製スクリーンを使用したものだが,今後はスクリーンの大型化に加え,反射型の正面投影型スクリーンの開発を進めるとしている。

■NHKのインテグラル立体テレビと多視点ロボットカメラ

NHKはインテグラル立体テレビと多視点ロボットカメラを開発している。インテグラル立体カメラは高解像度化が最も重要な課題だが,多視点ロボットカメラを利用することで,より自然な立体表現を作り出すことができるものとなっている。

■コンフォードビジョン研究所の240fpsカメラ技術

コンフォードビジョン研究所は8K×4K映像の動画性能をフルに引き出す,240fpsカメラを開発している。動画ぼけの対応にはハイフレームレートが有効だが,映像の3D化においても効果は高い。同社は光同時2分離方式のカメラを開発したが,将来的には光3分離方式の光学系を採用したカメラを開発し,8K対応の2D/3Dコンパチブル映像の実現を目指す。

■和歌山大学の16K全天映像によるパブリックビューイング

和歌山大学・尾久土研究室では,魚眼レンズを利用した16K全天映像による超臨場感パブリックビューイングの研究開発を進めている。東京オリンピックでの実用化を目指しているもので,全国に300~400箇所あるドームシアターへの映像伝送・表示を可能にする。具体的には専用に研磨加工した魚眼レンズを取り付けた4Kカメラで実写のドーム映像を撮影し,その映像を魚眼レンズを取り付けた4Kプロジェクタでドームスクリーンに投影する。5年後には8K映像対応を目指すとしている。

■パリティ・イノベーションズのDCRAを用いた空中映像システム

パリティ・イノベーションズは,二面コーナーリフレクタアレイ「DCRA」という微細精密光学素子を用いて空中に映像を浮かび上がらせるシステムを開発している。DCRAはナノインプリントを用いて作製しており,空中映像は映像が視察される距離や方向に関わらず空中に確定した位置に見られ,現実の物体のような存在感を持つ。

■農工大のタイリングによる等身大裸眼立体ディスプレイとARヘッドアップティスプレイ

東京農工大学・高木研究室では4Kディスプレイとプラスチックレンズで構成される多眼表示モジュールを重ねることで,大画面裸眼立体表示を可能にするディスプレイの研究開発を進めている。また,実風景など様々な情報を立体像として重ねて表示できる立体ヘッドアップディスプレイを用いたAR技術の研究も進めている。街案内のほか,クラウド情報やビッグデータの解析結果の表示にも利用できるとしている。

■東芝のテーブルトップ裸眼3Dディスプレイ

東芝は平置き構成によるテーブルトップ裸眼3Dディスプレイを開発。当初はフルハイビジョンディスプレイを利用したものを発表していたが,今回4Kパネルとレンチキュラレンズシートを用いて開発した。東京オリンピックでは競技場や空港,駅などの案内,競技や選手紹介,観光ガイドなどでの応用を想定している。

■NICTのテーブル型多視点映像技術

情報通信研究機構(NICT)は,360度の立体像を浮かび上がらせることが可能な裸眼3D表示技術の研究開発を進めている。光線像再生技術を用いているもので,現状の試作機では高さ5cmのサイズで,16万画素の立体映像を作り出すことができる。2020年までに高さ20cm,100万画素の映像表示を目指すとしている。NICTはまた,水平視差型立体表示技術「REIS」を複数面組み合わせたディスプレイの開発も行なっている。

■NTTのインタラクティブ映像配信システム

日本電信電話(NTT)は,インタラクティブ映像配信システムの研究開発を行なっている。全方位カメラにより撮影された360度の映像を,ヘッドマウントディスプレイを用いた直感的なユーザインタフェースで再現する。

「2020年,驚きの映像体験を!」を標榜した今回のデモ展示だが,これらの開発成果が実用に供されることで,新たな映像市場の創造が期待される。◇

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