NECは,同社初となるシリコンフォトニクス製品を発売する。発売を予定しているのはDWDM用のmicro-TLS(波長可変レーザ),maicro-ICR(Intergrated Coherent Receiver)。送信側光源となるmicro-TLSは制御回路と組み合わせ, micro-ITLA(Integrable Tunable Laser Assembly)として発売する。帯域は1530nm〜1570nmで約2nm間隔で掃引する。出力は100mW。一方,ICRはデジタルコヒーレントのQPSK変調に対応しており,こちらは単体で発売される。同社ではmicro-ITLAを今年中,maicro-ICRを7月を目処に発売を開始したいとしている。
シリコンフォトニクスに期待される低消費電力化は「まだそれほどではない」(同社研究員)レベルだというが,小型化には成功しており,面積比でmicro-TLSは従来製品の約1/2,maicro-ICRは1/4にダウンサイズしたという。ただし,値引き要請も強く,従来製品の半値ほどの価格を予想している。
一方研究開発分野では,NICTの委託研究「光トランスペアレント伝送技術の研究開発」でシリコンフォトニクスを用いた光スイッチの開発を進めている。これは12mm×12mmの基板上に8×8チャンネルのスイッチを作成したもので,実験ではファイバを実装して100G DP-QPSK信号のスイッチングに成功している。
シリコンフォトニクスのような極小の光デバイスを実現しようとするとき,ファイバとデバイスの接続が大きな問題となる 。ビーム径を光ファイバのコア径10μmから,チップ上の導波路径である1.4μmまで絞る必要があり,これが技術的なネックとなっていた。これまでレンズを使うなど幾つかのアイデアが発表されているが,同社はスポットサイズ変換器を用いてビームを絞っている。
まず汎用の細い(4μm)コアを持つ光ファイバと接続してビームを絞ったあと,シリコンフォトニクス基板上に作成したスポットサイズ変換器に入射する。変換器は先細りとなった四角錐台の形状をしており,これによりビーム径を1.4μmに絞る。この変換器は波長特性による信号劣化が少ないという特長がある。またファイバをしっかりと固定できるので,空間とレンズを用いた変換器などと比べて信頼性も高い。一方で「この変換器をシリコンフォトニクス基板上に作り込むのは難しく,これがNECのノウハウとなる」(同社研究員)という。(写真はスイッチのテストデバイス。写真右のパッケージが開発したスイッチ基板)
スイッチングはヒーターを使って導波路を加熱し,光の屈折率を変えるMZ干渉計を応用したスイッチを利用している。基板上には152個のヒーターが作り込まれており,導波路の温度を50℃ほど上げ下げする。導波路サイズが極小のため応答性は1.5msと高い。対するMEMSや石英でのスイッチングは10msなので,スイッチング速度の点でも従来技術を大きく上回る。
シリコンフォトニクスによって,現在の光スイッチの数十分の1のチップサイズを実現しており,デバイスのとした場合でも1/10程度になるという。また消費電力は900mWで,これは現在のスイッチの1/5程度だとしている。現在のところ歩留まりの問題があるというが,同社では2年後を目処に,この技術を実用化したい考えだ。
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