三菱エンジニアリングプラスチックスは,レーザ溶着工法向けに新しいポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂「ノバデュラン®LWシリーズ」を開発した(ニュースリリース)。
レーザ溶着工法は,接合面にレーザ光を到達させ,そのエネルギーを利用して瞬時に吸収発熱させることで接合する工法であり,接着剤塗布や超音波溶着等の従来の接合法に比べて,設計自由度の向上,組み付け工数,部品点数の削減が可能となり,車載電装部品等で導入され始めている。また,リサイクルが容易な部品を製造できる利点もある。
同社は,独自のポリマー配合技術により,優れた生産性と信頼性を発現するレーザ溶着可能なLTW工法用の材料と,PBTでは世界初のACW®工法用材料の製品化に成功した。
LTW工法は,レーザを透過する樹脂と吸収させる樹脂との組み合わせからなり,不透明なPBT樹脂の場合,透明な樹脂を透過側に用いる場合と比べて高いエネルギーを与える必要があるが,レーザ透過性を著しく向上させた新規な透過材料「ノバデュラン®5810G30LW-黒色」を開発した。
既に「ノバデュラン®5810G30-自然色」は,生産スピードの向上と品質管理面で溶着部の視認性が一目で判断できることから,車載電装部品への採用実績が有る。また,難燃性が求められる製品からも要望が高く,レーザ波長領域の透過率が高い,UL94 V-0相当(3mm)の難燃性を有している「ノバデュラン®5010LWN1(仮称)-黒色」も製品化の目途を付けているという。
上述の2グレード(自然色及び黒色)は,吸収側材料として任意のノバデュラン®PBT樹脂の黒色グレードと組み合わせた部品溶着が可能となっている。
一方,ACW®工法では,レーザ光の透過および吸収性能を制御した同種の黒色PBT樹脂材料をレーザ溶着する事に大きな特徴がある。更に溶着時のレーザ照射方向に制限がなく,あらゆる方向からの照射溶着が可能になる。その為,従来のLTW工法では困難であった「突合せ溶着」,「大型部品での複雑な3次元溶着」が可能となるほか,溶着面の両部品ともにレーザ照射で溶融する為,溶着部の隙間が存在しても高い溶着強度が発現する溶着工法で,従来のLTW工法の適用が困難であった部品への展開が期待される。