理研,星の「ストレス発散」で飛び散った痕跡の観測に成功

理化学研究所(理研),米ハーバード・スミソニアン天体物理学センター,アメリカ航空宇宙局(NASA),立教大学,宇宙航空研究開発機構らの共同研究グループは,「新星」爆発の衝撃波によって加熱された高温プラズマが宇宙で拡散する様子を初めて捉えた(ニュースリリース)。

星は進化の過程で新星と呼ばれる核爆発を起こす。表面のガスを数十年から数万年程度の周期で吹き飛ばし,言わば溜めたストレスを爆発で定期的に発散させている。爆発の際に起こる爆風が強い衝撃波を作れば,周りのガスをプラズマになるまで加熱しながら大きく広がる。その際,プラズマはX線を放射する。

加熱された高温プラズマが拡散する様子は,爆発のメカニズムや宇宙の歴史を探るための重要な鍵となる。しかし,これまで新星の爆風が広がる様子を示す明確な証拠がなかった。これは,新星の場合は規模が小さいため爆風による痕跡の観測が難しく,さらに爆風が広がる過程を追うには,最低でも2枚の鮮明なX線写真を十分な期間をあけて撮影する必要があるため。

共同研究グループは,1901年に新星爆発を起こした「ペルセウス座GK」に着目した。ペルセウス座GKは,2000年に米国のチャンドラX線観測衛星に搭載されたX線望遠鏡で撮影された写真に,衝撃波で過熱された高温プラズマの痕跡(X線)が検出されている。

共同研究グループは2013年に同望遠鏡で追従観測し,高温プラズマが広がる様子を捉えることに成功した。そして,2000年に撮影された写真と比較した結果,地球から約1,500光年の距離にあるペルセウス座GKの爆風が,ガスの温度を約100万度に維持しながら,14年間で0.01光年(約900億km)ほど広がったことを突き止めた。

観測装置の性能が上がるにつれて,観測可能な宇宙の範囲は大きく広がってきた。今回の結果のように,今まで見えなかった現象が見えたことは,まさしく天文学の根源的な面白さであり目的ともいえる。共同研究グループは今後,他の新星でも同じような測定を行なえる可能性を求め,世界中の人工衛星や地上望遠鏡を駆使した新たな天体観測に挑んでいくとしている。

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