原研ら,粒子状混合物中のウラン・プルトニウム量を非破壊で高精度に測定

日本原子力研究開発機構(原研)と欧州委員会共同研究センター(EC-JRC)は,共同で粒子の複雑な混合物中のウラン・プルトニウム量を非破壊で高精度に測定する基礎技術の開発に成功し,模擬試料を用いた原理実証試験を実施した(ニュースリリース)。

実証試験は,JRC-IRMM(標準物質・計測研究所;ベルギー)にて,欧州委員会エネルギー部(DG-ENER(EC)),国際原子力機関(IAEA)や米国エネルギー省などから専門家を招き,模擬試料を用いて行なわれた。

原研(核不拡散・核セキュリティ総合支援センター及び原子力基礎工学研究センター)とEC-JRC-IRMMは,平成24年度から3年間に渡り,IRMMの実験施設を用いて今回の基礎的な実証研究を進めてきた。

この研究の適用対象の一例として粒子状溶融燃料が挙げられる。これは過酷事故の際に原子炉内の水と溶融燃料接触による急激な蒸発により飛び散ることや取出し時の破砕により発生すると考えられ,その中には,核燃料に加え,セシウム137などの放射性物質や,原子炉を構成するジルコニウム,鉄,コンクリート,さらに中性子吸収能力の高いボロンなど,様々な物質が混入していると考えられる。

実証試験では,非破壊で粒子状の複雑な混合物中のウラン・プルトニウムを同位体別に定量することを可能とする,「中性子共鳴濃度分析法」の基礎的な実証を行なった。この中性子共鳴濃度分析法は,パルス中性子ビームによる中性子共鳴透過分析法(同位体分析)をベースに,それに影響を与える混合物の即発ガンマ線非破壊分析(特定核種分析)を同時に行なうもの。

今回の実証実験により,粒子状の複雑な混合物中の核燃料物質を定量できる新たな非破壊測定法を原理実証し,粒子状の複雑な混合物のウラン,プルトニウムを同位体別に高精度定量することに成功した。また,粒子状溶融燃料に含まれる核燃料物質量の測定技術の向上にも貢献が期待される。

これまで複雑な組成を持つ溶融燃料中の核物質を高精度に定量する技術は確立されていなかったが,今回の実証実験により,新たな測定手法の可能性が示されたとしている。

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