富士通,赤外線による虹彩認証を搭載したスマートフォンの試作機を開発

富士通は,スマートフォンの画面を見るだけで,一瞬でユーザの目の虹彩が読み取られ,ロック解除が可能となる虹彩認証システムを開発し,その技術を搭載したスマートフォンを試作した(ニュースリリース)。

スマートフォンやタブレットは,データだけでなく,電子マネーや個人情報などの格納にも利用されるため,セキュリティの重要性が高まっている。現在では,スマートフォンのセキュリティ機能はパスワード方式が標準搭載されているが,パスワードの入力に手間がかかったり,手を使う煩わしさといった理由から,実際にはその機能を利用していないユーザも少なくない。こうした問題に対し,同社は安全で使いやすい,新たな虹彩認証システムを開発した。

虹彩認証とは生体認証方式の一つであり,瞳孔の外側にある虹彩の皺のパターンを認識し本人確認を行なう。同社は,従来からある虹彩認証機能をスマートフォン用に小型・最適化することに成功した。虹彩は2歳頃から殆ど変化することなく,さらに外傷を受けにくく,偽造も困難といった特長がある。

人の眼球は,虹彩の中の平滑筋の働きにより,穴を大きくしたり小さくしたりして,網膜に入る光の量を調節する。虹彩認証技術は,虹彩の持つ皺のパターンを,指紋のように各人固有の識別情報としてとらえる。虹彩を読み取る方法は,赤外線LEDで赤外線を照射し,赤外線カメラで眼球部分を撮影することにより,虹彩パターンを取得し,登録・照合する。

既存の虹彩認証システムを構成する部品では,サイズや性能がスマートフォン搭載への障壁になっていた。同社は専用の高出力な小型赤外線LED照明および専用の赤外線カメラを開発し,また長年携帯電話やスマートフォンの開発で培ってきた生体認証技術やカメラ制御技術を活用することで,日常生活における様々な場所でも,微細な虹彩パターンを確実に認証するシステムを実現した。

さらに,高速かつ高信頼性の虹彩認証エンジンであるDelta ID社の「ActiveIRIS®」を採用することで,今までの虹彩認証システムでは,目と赤外線カメラの位置を10cm程度まで近づける必要があったが,通常のスマートフォン使用時の目とカメラの距離でも認証が可能となった。光生物学的安全性試験(IEC 62471)を実施することで,赤外線LED使用時の目の安全性も十分に検証している。

この虹彩認証技術は,スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスはもちろん,同社のセキュリティソリューションへの適用を視野に入れた幅広い応用が可能だとしている。同社では,虹彩認証技術とその多様化について研究開発を進め,2015年度中に製品化することを目指す。

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