富士通研究所は,今後のサーバやスパコンのCPU間大容量データ伝送の実現に向け,世界で初めて多並列化が可能な光送受信回路を開発した(ニュースリリース)。
従来,伝送信号の高速化や伝送回路の高密度化に必要な波形整形やノイズの低減を実現するリタイマ回路は,隣接するリタイマ回路間で互いに干渉をおこすため,配置間隔を狭めることが困難だった。回路幅を一般的な光ファイバの配置ピッチである0.25mmに合わせると送受信回路を小さくできるが,それに対しリタイマ回路は0.5mm以上の間隔が必要だった。
同社は今回,リタイマ回路間の相互干渉による影響を定式化し,解析手法を確立することで,光ファイバと同間隔の0.25mmでリタイマ回路を配置することに世界で初めて成功した。これにより,光送受信回路の多並列化が可能となる。
具体的には,挙動が複雑で,これまで明確化されていなかった発振回路のコイル間の相互干渉の定式化し,それを回路シミュレータに組込むことで,リタイマ回路に与える動作ノイズの影響を数値化した。また,シミュレーションのモデルに対して,コイルの相互干渉の影響が小さくなる約10個の設計パラメータを抽出し,各パラメータを変更して最適な値を算出した。これによりリタイマ回路間の干渉による変動に追従可能な速度で,電流の増幅量を調整するゲイン調整回路を開発した。
同社は開発した技術を用いて,リタイマ回路を集積化した光送受信回路と光素子を4組並列動作させる実験を行ない,100Gb/sの伝送を確認した。このリタイマ回路を集積化した光送受信回路と光素子を16組使えば400Gb/sの次世代光インターコネクトを実現でき,将来のサーバ間通信,次世代スパコンなどの大容量データ伝送に適用できるとしている。