阪大ら,超新星衝撃波を作る磁場をレーザで生成することに成功

大阪大学の研究グループは,米国の大型レーザ「OMEGA」を使った米国・英国・日本8研究機関の国際共同研究で,宇宙の極限でしか実現しない秒速1千キロを越える対向する2つの超高速プラズマ流を生成し,磁場不安定性によって乱流磁場が作られて行く様子を実験で観測することに成功した(ニュースリリース)。

重い恒星が一生を終える超新星爆発では,秒速2千〜3千キロでプラズマが吹き出す。このプラズマの流れが宇宙空間に分布する薄いプラズマ中を伝わる時に,球状の衝撃波ができる。

銀河内では100~200年に1回程度超新星爆発が起こり,宇宙線はこの衝撃波で数千年かけて加速されて作られていると考えられている。しかし,衝撃波の物理機構や荷電粒子が加速されて宇宙線になる科学的根拠は観測からはわからない。

研究グループは2008年に,2つの対向する高速のプラズマ流があれば,プラズマ中に磁気不安定が起こり,強い乱流磁場が発生し,この磁場の影響で衝撃波が作られることを計算機シミュレーションで示した。

これを実験で検証するために,2010年に世界で1番大きな米国リバモア研究所のレーザ「国立点火施設(NIF)」を使った実験提案をし,採択された。この実験に興味を持った,日本・米国・欧州の総勢30名を超える研究者が集まり,2010年秋から世界で2番に大きな米国ロチェスター大学の「OMEGA」レーザを使った実験が開始された。

研究では,向かい合った2枚のターゲットに「OMEGA」レーザを照射し,対向する2つの高速プラズマ流を生成した。同時に別のターゲットにレーザを当てて核融合反応をおこし,核反応で作られた高速の陽子をプラズマ中に通して,磁場の空間構造を測った。

その結果,プラズマ流の相互作用によって時間と共に磁気不安定が成長し,構造が大きくなりながら強くなる磁場が作られていく様子が明らかになった。また,計算機シミュレーションと実験結果を比較したところ,衝撃波を作るためには「OMEGA」レーザではエネルギーが不十分であり,「NIF」レーザを使えば磁場乱流が衝撃波を作ることも明らかになった。「NIF」レーザ実験は2014年の秋に開始され,研究グループは衝撃波の生成を詳しく観測する。

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