広島大,磁性化した自己骨髄幹細胞を欠損部に磁力で誘導することに成功

広島大学病院整形外科のグループは2月6日,培養した自己骨髄幹細胞を関節に注入し,磁力で軟骨の欠損部に誘導する手術を世界で初めて実施した(ニュースリリース)。この手術は,「自己骨髄間葉系細胞の磁気ターゲティングによる関節軟骨欠損修復」の臨床研究で,第1症例目となるもの。

この治療法は磁性化した患者自身の骨髄間葉系幹細胞を関節に注入し,体外から磁石の力で欠損部に集積させて軟骨を修復させる再生医療技術。体への負担が少なく,関節鏡手術でできる特長がある。広島大学病院での臨床研究は世界に先駆けて昨年11月,厚生労働省から許可された。

研究グループは,1996年に世界の先駆けて3次元培養軟骨移植を開始しており,欠損した軟骨に自家培養した軟骨パッチを手術で移植する治療を行なっているが,細胞の増殖に限界があるため大きな欠損には適応が困難なほか,2回の手術が必要で,移植時には患部を大きく展開するため,侵襲性が大きいことが問題だった。

今回の方法はまず,軟骨損傷患者の腸骨から骨髄液30mlを採取して骨髄間葉系細胞を取出し,カルボキシデキストランで被覆された超常磁性酸化鉄の親水性コロイドからなる造影剤であるフェルカルボトランを混ぜて培養し磁性化させる。この細胞を関節鏡を用いた磁気ターゲッティングによる移植を行なった。

この方法は侵襲性が低く,自己修復能を用いるので若年層にも適しているという。グループは今後,安全性などを検証する。

関連記事「岡山大,心筋再生医療として幹細胞自家移植療法の有効性を確認」「ケンブリッジ大学,ヒト多能性幹細胞の初期胚に近い状態へのリセットに成功」「京大,骨格筋幹細胞が眠るしくみの一端を解明