13ヵ国からなる,ハイパーカミオカンデ国際共同研究グループが結成

ハイパーカミオカンデ用に開発中の超高感度光センサ。左は半導体電子増幅素子を内蔵したハイブリッド型光センサで,右は高性能電子増幅電極構造を持つ光センサ。下はそれぞれの電子増幅部のもの。

1月31日,千葉県柏市の柏の葉カンファレンスセンターにて,ハイパーカミオカンデ国際共同研究グループ結成記念シンポジウム及び調印式が開催された(ニュースリリース)。ハイパーカミオカンデ計画は,これまで日本で培われてきた高度なニュートリノ実験技術をもとにスーパーカミオカンデの10倍スケールのニュートリノ検出器を新たに建設し,J-PARCの大強度ニュートリノビームと組み合わせることにより,「素粒子の統一理論」および「宇宙における物質の起源と進化の謎」に挑戦するもの。

当日は,ハイパーカミオカンデ計画を国際的に推進するための共同研究グループ結成を記念したシンポジウムが開催された。さらに,東京大学宇宙線研究所と高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所は,ハイパーカミオカンデ計画の具体化に向けた検討についての協力協定を交わすことを決定し,調印式をとり行なった。

ハイパーカミオカンデ計画では,スーパーカミオカンデに代わる100万トン級大型水チェレンコフ検出器を建設する。水槽内部には,スーパーカミオカンデのものより50%感度を高めた,世界最大の超高感度・高精度光センサが設置される。これは建設費を抑制しつつ巨大実験装置を実現する,重要な要素の一つとなる。

さらに,J-PARCからの大強度ニュートリノビームを用いて,ニュートリノの質量や混合の全貌を明らかにすることを目指す。特にニュートリノにおけるCP対称性(粒子・反粒子対称性)の破れの発見と共に,素粒子の大統一理論に迫る陽子崩壊の世界初の発見を目指す。

また,ニュートリノ反応の研究,大気ニュートリノ観測,宇宙ニュートリノ観測,ニュートリノ天文学を総合的に展開し,素粒子物理学の新たな展開と,原子核物理学,宇宙物理学,天文学に新たな知見をもたらすことを目指す。国際研究プロジェクトとして世界の研究者が協力し,2025年の実験開始を目指している。

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