東北大,親子の時間が子どもの言語理解に影響を与えることをイメージングで解明

東北大学は,MRI等の脳機能イメージング装置を用いて小児の縦断追跡を行ない,日々の生活で,親子でどのくらいの長さの間ともに時間を過ごすかが数年後の言語理解機能や脳形態の変化とどう関連しているかを解析し,長時間,親子で一緒に過ごすことか,脳の右上側頭回の発達性変化や言語理解機能に好影響を与えていることを明らかにした(ニュースリリース)。

乳幼児に対する言語的働きかけ,反応や小児における親子の相互作用,特に言語のそれの量が,言語スキルや言語知識といった言語発達指標を長期的に上昇させることが数多くの横断心理学研究や縦断心理学研究により明らかにされてきた。

一方,これまでの先行研究において健常の小児が発達の中期以降に,神経回路の刈込みと呼ばれる現象が背景にあると考えられる,灰白質量の減少を示すことが示されてきた。また脳の上側頭回が,言語的理解や非言語的コミュニケーションの理解などに関わることも知られている。同様に,親による子供への言語的虐待や,親の虐待による心的外傷後ストレス障害(PTSD),親の社会経済ステータスなどが子供の言語機能の低下と上側頭回の脳灰白質形態に影響を与えることも示されてきた。

しかし,これらの言語機能と関連する領域の発達に,健常な親子における相互作用がどのような影響を与えるのかは明らかにされていなかった。そこで研究では,健常小児において,親子の相互作用の量の生活習慣が脳形態や言語機能に与える影響を解明することを目的とした。

研究参加者は,一般より募集した,悪性腫瘍や意識喪失を伴う外傷経験の既往歴等のない健康な小児とし,最初に生活習慣などについて質問に答え,知能検査をうけ,MRI撮像を受けた。これらの研究参加者の一部が,3年後に再び研究に参加し,再び知能検査とMRI撮像を受けた。

これらの結果,初回参加時における長時間親子で過ごすことは,初回参加時に高い言語理解指数と関連し初回参加時から数年後の2回目参加時へのより一層の言語理解指数増大につながっていた。同様に初回参加時において長時間親子で過ごしていたことは,初回参加時の両側の上側頭回等の局所灰白質濃度の低さと関連しており,さらに2回目参加時への右上側頭回の発達性変化への負の影響(灰白質濃度の減少が少ないこと)と関連していた。

今回の成果より,小児において長時間親子で一緒に過ごすこと,とくに会話をもつことで,脳の言語機能に関わる領域が影響をうけ,これが長時間親子で一緒に過ごすこと,とくに会話をもつことによる言語機能発達の増加と関連することが示唆された。

親の就学期前の子供への言語的働きかけや,相互作用の言語スキル・知識の重要性はよく知られていた。今回の 知見により就学期前だけでなく,それ以降の発達期においても親子で多くの時間を過ごすこと,会話を持つことが言語関連脳神経機能の良好な発達に重要であると示唆されたと考えられるという。

また,脳画像解析,大規模なデータ,数年の期間をおいた縦断解析といった手法を用いて,発達期の親子の相互作用の言語機能などへの好影響の神経メカニズムを新たに明らかにした点などから,従来にない画期的な研究成果だとしている。

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