愛媛大,二光子顕微鏡を用いた変形性関節症の早期診断法を確立

愛媛大学および医学部附属病院の共同研究グループは,変形性関節症の初期の病態把握に有効な,新規の顕微鏡イメージング解析法を開発した(ニュースリリース)。この研究で確立された方法は,変形性関節症の早期診断や新しい治療法の開発への基盤技術となる可能性がある。

変形性関節症は,軟骨の微細な損傷が原因で始まる病気。徐々に軟骨が変性・消失し変形性関節症を発症する。軟骨損傷は年齢とともに増加し,すでに我が国では4人に1人が変形性膝関節症であると言われている。軟骨はレントゲンに映らないため,変形性関節症はレントゲンによる骨の位置の変化で軟骨の損傷を推測しているが,この変化が観察される時期には,かなり病気が進行している。

また,現在可能な治療は痛みに対する治療が中心であり,病末期には侵襲の大きい外科的手術しかなく,患者のQOLへの負担が大きい。このような現状から,変形性関節症の軟骨損傷に始まる病態変化を早期に診断する技術が重要となる。このような技術は,組織再生治療を現実に近づけ,さらには再生治療の術後判定にも大いに役立つ。そこで研究グループは,先進の顕微鏡イメージング技術を応用し,軟骨組織の病態の変化を定量的に捉えることに成功した。

光で生体組織を観察する,いわゆる“光イメージング技術”は,生体を傷つけることなく細胞や組織の形態をリアルタイムで描出できる。近年,医学・生物学分野の研究ツールとして注目され,診断技術への応用も期待されている。なかでも,特殊なレーザ光源を搭載した二光子励起顕微鏡は,染色や標識をすることなく軟骨を描出することを可能にする。

研究では,変形性膝関節症を発症するマウスを対象に,レントゲンでは描出できない微細な軟骨損傷を二光子励起顕微鏡で捉えることに成功した。正常の関節軟骨では,軟骨細胞が一様に存在し,軟骨表面はスムーズである。一方,変形性関節症の軟骨は,軟骨細胞が減少し,表面は粗く削れた形状を呈する。また軟骨にある微小な亀裂も見られる。これは従来の診断法であるレントゲンや,関節鏡では捉えることができなかった微細かつ重要な初期病態変化であり,軟骨変性疾患の診断指標となりえるという。

研究グループは今後,この技術を関節鏡などの機器に搭載し,臨床の場で早期診断法として実用化を目指して基礎研究と機器開発を進めていく。また,診断だけでなく,未だ明らかにされていない軟骨損傷のメカニズムの解明,軟骨再生治療の研究,全く新しい治療法の開発への貢献にも期待されるとしている。

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