近大ら,レーザを用いた歯のエナメル質修復技術を開発

近畿大学,大阪歯科大学,モリタ製作所の研究グループは,ハイドロキシアパタイトの膜を,レーザを用いて直接歯に堆積させ,エナメル質を修復する技術を開発した(ニュースリリース)。

歯の表面部分を占めるエナメル質は,一度欠損してしまうと二度と再生しない。虫歯や摩耗などで欠損した場合,これまでには主にレジンなどの高分子材料が歯の修復に用いられてきた。しかし,レジンは歯の成分と全く異なるためにアレルギー反応のリスクがあり,治療を受けられない人もいる。また,レジンの性質は歯の性質と全く異なるため,歯との間に亀裂や剥離が生じるという問題が指摘されている。

本来,歯の治療は歯の主成分であるハイドロキシアパタイトを用いて行なうことが理想だが,ハイドロキシアパタイトのようなセラミックスを互いにくっつけることは非常に困難であるため,いまだ実現されていない。研究具グループはこれまでにも,「歯のばんそうこう」と呼ばれる,柔軟に曲がる極薄のハイドロキシアパタイトシートを開発しているが,大きくえぐられた欠損の修復には適応できないという課題があった。

研究グループは,Er:YAGレーザを用いてハイドロキシアパタイトの膜を大気中で生成することを試みた。Er:YAGレーザは虫歯の治療において,う蝕部を削るのに使用されている。研究グループはこの削るというレーザの分解,剥離反応を着目して,歯の表面上でレーザをハイドロキシアパタイトなどの材料に照射すれば分解,剥離反応により粒子が飛散し,ハイドロキシアパタイトの膜を形成できると考えた。

実際に,α-リン酸三カルシウムの材料(アパタイト前駆体ターゲット)にレーザを照射し,歯のエナメル質に膜を形成させたところ,約3時間でほぼハイドロキシアパタイト膜が生成され,エナメル質の修復に活用できることが確認された。また,象牙質上に膜を形成させると,ハイドロキシアパタイト膜が人工エナメル質となって象牙細管を完全に封鎖できることから,象牙質知覚過敏の治療にも応用できることがわかった。

今回開発した技術では歯の主成分であるハイドロキシアパタイトを用いるため,治療に用いてもアレルギー反応を起こすことがなく安全。また,象牙質知覚過敏の治療にも使用できることから,歯質の保護,エナメル質のマイクロクラック(細かなひび割れ・亀裂)の修復や審美歯科にも応用できる可能性があるとしている。

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