埼玉大,量子的振動による化学結合が存在する可能性を発見

埼玉大学の研究グループは,2つの重い原子とそれらに挟まれた非常に軽い原子で構成される分子系(heavy-light-heavy system)としてBrLBr(Lは水素原子の同位体)系に注目し高精度な量子化学計算を行なった。その結果,Lが水素原子より軽いミュオニウムの場合では遷移状態構造が反応の入口・出口よりも安定になることが分かった(ニュースリリース)。

1980年代に,2つの重い原子とそれらに挟まれた非常に軽い原子で構成される分子系(heavy-light-heavy system)の遷移状態が,重い原子の間を軽い原子が行き来する量子的振動によって安定化することが提唱された。しかし,最近まで実験・理論の両面で量子的振動結合を示す有用な証拠は得られていなかった。

研究グループは,ハロゲン原子と水素原子の組み合わせに注目し,BrLBr系について高精度な量子化学計算を行なった。その結果,Lが水素原子より軽いミュオニウムの場合では量子的な振動が激しくなることで遷移状態構造がBr + LBr解離極限に比べて安定になることがわかった。

これは,量子的振動による化学結合が存在する可能性,すなわち同位体置換がこれまでと全く異なる化学現象を生み出す可能性があることを示唆する。