東北大,貼ると発電する皮膚パッチを開発

東北大学の研究グループは,酵素によるバイオ発電の技術を利用して,体に貼ると微弱な電流が発生し,皮膚を通した薬の浸透が促進される「バイオ電流パッチ」を開発した(ニュースリリース)。

生体・環境に優しい有機材料のみで造られており,軽く・薄く・柔らかく,使用後はそのまま捨てることができる。今回,皮膚パッチに自ら発電する能力を搭載したことで,家庭用の使い捨てセルフケア用品として普及する可能性がある。

皮膚の表面から薬を投与する「経皮投薬」は,湿布や禁煙用のニコチンパッチなどがある。これらは各種有効成分の皮膚内への浸透が,数 10 マイクロアンペアの微弱電流によって数倍~数 10 倍に加速される効果が認められており,局所麻酔剤の高速投与や発毛・育毛成分の浸透促進などに広く利用されてきた。

これは,微弱電流に伴って生じる組織液の流れに乗った薬物浸透の結果で,イオントフォレシスと呼ばれる現象。これを利用し,小型電池を電極パッドに一体化する試みが進んでいるが,通常の「電池」は重厚で使用後の処理にも配慮を要する。

開発したパッチは、酵素を炭素繊維布に固定化したアノードとカソードを,ゴム製の抵抗(ウレタンゴムと導電性高分子の複合体)で連結し,フレームとともに O2 透過性のメディカルテープに貼り付けたもの。

これを,糖分(フルクトース)と鎮痛剤などを含むハイドロゲルに組み合わせて皮膚へ張り付けると,皮膚を通してイオン電流が流れる出す仕組みになっている。その際,酵素アノードではハイドロゲル内の糖分を酸化し(電子を引き抜く),カソードでは空気中の O2 を還元する(電子を受け渡す)反応が起きている。

皮膚は弱く負に帯電しているため,皮膚内のイオン流の大部分は陽イオンの移動となる(アノード→カソード)。よって,これが生み出す組織液の流れに乗った薬剤浸透(イオントフォレシス)は,主にアノード近傍で起こる。

生み出せる最大電流は,皮膚の抵抗(約 700Ω)のために 0.3 mA/cm2 程度で,痛みを伴う可能性がある 0.5mA/cm2 よりも小さい。パッチの電流値はアノードとカソードの間の抵抗値(皮膚の抵抗 + パッチの内部抵抗)で決まる。よって,皮膚の抵抗(200Ω~700Ω)よりも十分に大きな内部抵抗を搭載すれば,皮膚抵抗の寄与が減り,個人差や皮膚の状態によらず所定の電流を発生させることができるとしている。

バイオ電流パッチの出力は 6 時間以上持続するため,就寝時の利用が可能。また,ゴム製の内部抵抗を搭載するので,体表で最も大きく動く関節部でも使える程にストレッチャブルという特長を持つ。

微弱電流で生じる皮下組織液の流れは,それ自体がマッサージ効果やシワ取り効果を有するので,バイオ電流パッチの応用は経皮投薬に限らず多様であり,研究グループではセルフケア用品としての普及が期待されるとしている。