田中貴金属工業,光電変換波長域を1,000nm以上にした色素増感型太陽電池色素を発売

田中貴金属工業は,光電変換波長域を1,000nm以上にまで長波長化した,色素増感型太陽電池用のルテニウム錯体色素 DX(ダイエックス)を2015年1月から提供開始すると発表した(ニュースリリース)。

この製品は,内閣府最先端研究開発支援プログラム(FIRST)の中心研究者東京大学  瀬川浩司教授らが技術開発した色素増感型太陽電池用の増感色素で,従来から用いられているルテニウム増感色素が吸収できなかった近赤外光を効率良く吸収し,光電変換することを可能にした。田中貴金属工業は,東京大学からライセンスを受け,製品の国際特許を共同出願した。

従来の色素増感型太陽電池では,発電波長域の長波長側の限界が800nm程度に留まっており,長波長光を利用できる近赤外吸収色素の開発が求められていた。この製品は,スピン反転励起の利用により,従来の増感色素に比べ発電波長域を長波長側に200nm程度拡張することに成功。

その結果,太陽電池の光電流値が25%以上向上し,この色素を用いた高性能太陽電池では,有機系太陽電池として世界最高の30mA/cm2以上の光電流と10.0%以上の高い変換効率が得られるようになった。

この製品は,従来の増感色素に比べて可視光より長波長の近赤外線も高効率で光電変換できるため,屋外光による発電にも適している。また,CYC-B11などの可視領域に特化した色素と組み合わせることにより,さらなる高変換効率を達成できるタンデムセルも開発されている。

同社は,貴金属メーカとして色素の原材料となるルテニウムを安定調達し,歩留まりの高い製造プロセスの開発やルテニウムを有効利用するためのリサイクルなど,実用化と普及に向けて製造コストの削減に取り組んでいるという。

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