アルマ望遠鏡,連星系の惑星形成に深く関わるガスの流れを発見

フランス国立科学センター/ボルドー天体物理学研究所の研究グループは,アルマ望遠鏡を用いて若い連星系を取り囲む環から内側に流れ込むガスの流れを発見した(ニュースリリース)。連星を成す片側の星のまわりには小さな環があり,その環が今回発見されたガスの流れによってその質量を維持されていることがわかった。

研究グループは,おうし座GG星Aと呼ばれる星の周囲のガスと塵の分布を調べた。この天体は生まれてから数百万年しかたっていない若い天体であり,おうし座の方向に地球から約450光年の距離にある。

おうし座GG星Aは,おうし座GG星AaとGG星Abからなる連星。この連星系を取り囲むかたちで大きな環があることが知られており,おうし座GG星Aaの周囲には小さな環がある。この小さな環は木星と同程度の質量しかなく,環の物質はおうし座GG星Aaにどんどん流れ込むため,この環が安定に存続していることは大きな謎だった。

今回の観測により,このふたつの環のあいだにガスのかたまりを発見した。これは,外側の環から内側の環に向かってガスが流れ込んでいることを示している。この様子は,コンピュータシミュレーションでは予測されていたが,実際には観測されていなかった。

今回の観測では,予測されていたガスが確かに存在することがわかった。これは,おうし座GG星Aaのまわりの環は外側の環から「エサ」をあたえられているようなもの。研究グループは,外側の環のおかげで内側の環が長期にわたって存在できることがわかったことは,内側の環の中での惑星の形成を考えるうえで重要な成果だとしている。

惑星は,星の誕生後に残された物質が集まることで誕生する。惑星の誕生には数千万年の時間がかかると考えられているため,星の周囲の環がそれと同じくらいの期間安定して存在しなければ,その中で惑星が生まれることはできない。今回発見しような,外側の環からの物質の供給が他の連星系でも普遍的に起きている現象であるならば,これまで考えられていたよりもずっと多くの場所で惑星が誕生している可能性がある。

これまでの研究では,連星系を回る木星型の巨大ガス惑星も多く発見されている。さらに,連星系を成す個々の星のまわりにも惑星が存在する可能性が議論されている。研究グループは,今回の成果はそうした惑星が存在する可能性が高いことを示すもので,惑星形成を包括的に理解するための,非常に重要なステップだとしている。

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