京大,形状と細孔サイズを自在に操れる多孔性3次元グラフェンナノシートとその簡便な合成方法を開発

京都大学は,形状と細孔サイズを自在に変えることができる多孔性の3次元グラフェンナノシートとその簡便な合成方法の開発に成功した(ニュースリリース)。

グラフェンはバッテリー,燃料電池,キャパシタなどのエネルギーを貯蔵する材料として注目されており,現在電極材料として一部で使用されているが<表面積の小さい2次元シートのためにその使用範囲が制限されている。

また,これまでに気相で成長させる方法(CVD)や酸化グラフェンを溶液に分散させてから塗布する方法などが提案されてきたが,いずれの方法も用途に応じた形状にしたり,細孔のサイズを変えたりすることが容易ではなく,また2次元であるために表面積の大きいシートをつくることが困難だった。

今回,陰イオンをもつ酸化グラフェンと陽イオンをもつポリエチレンイミンというポリマーが電気的に引き合って,ポリイオンコンプレックスという複合体を形成する性質を利用した。

その複合体のなかで,陽イオンをもつポリエチレンイミンが陰イオンをもつ酸化グラフェンに拡散しながら,多孔性の酸化グラフェン積層膜をつくるという全く新しい方法を見出した。この現象を利用して,シート状や塊状などさまざまな形状の3次元多孔性グラフェンナノシートの合成に成功した。

具体的には,陰イオンのカルボン酸残基を有するグラフェン,グラフェンオキサイド(GO)と陽イオンのアミン残基を有する分岐タイプのポリエリレンインミン(b-PEI)を用いた。

GOの分散液とb-PEIの溶液を接触させると,陰イオンと陽イオンが引き合う性質から,GOtとb-PEIが絡み合ったポリイオンコンプレックスが生成する。時間とともにb-PEIがGO全体に拡散し,GOは安定な多層構造を形成して細孔をつくっていく。研究グループはこの構造を「拡散誘起多層構造(dd-LbL)と名付けた。

この成果により,これまで不可能であった任意の形状をもつ積層膜や細孔サイズを自由に変えることができる3次元シートをつくることができるようになった。さらに熱処理により高い電気伝導性が発現された。

この成果につて研究グループは,本来多孔性グラフェンナノシートがもつ電気特性,柔軟性や機械的強度を生かし,電気二重層キャパシタやリチウムイオン電池の陰極,吸着材,センサなどへの応用により,社会に大きなインパクトを与えることが期待されるとしている。

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