千葉工大らによる,超高感度カメラを用いた流星観測プロジェクトがスタート

千葉工業大学惑星探査研究センターでは,国際宇宙ステーション(ISS)から超高感度CMOSカラーハイビジョンカメラにより流星の長期連続観測を行なう「メテオ」プロジェクトをNASA,The Center for the Advancement of Science in Space(CASIS)及びSouthwestResearch Institute(SwRI)と協力して2012年から進めている。

今回,ISSに搭載する流星観測カメラ「メテオ」は10月27日,米国バージニア州NASAワロップス飛行施設より,オービタル・サイエンシズ社(OrbitalSciences Corporation)のシグナス補給船運用3号機(Orb-3)に搭載され,同社で開発したアンタレスロケットで打上げられる(ニュースリリース)。

流星観測カメラシステム「メテオ」はISSに打ち上げ後,米国実験棟「デステニィー(Destiny)」内の観測用ラック(WindowObservational Research Facility :WORF)に設置され,窓越しに約2年間流星観測を行なう。

観測に使用するハイビジョンカメラは,NHK番組「宇宙の渚」で使用されたカメラの改良版。このプロジェクトは宇宙から流星を長期連続観測するという世界初の試みとなる。また,米国実験棟で主体的に科学観測を行なう日本初のプロジェクトでもある。

メテオとは日本語で流星のこと。流星とは彗星や小惑星から放出された塵の集まりの中を地球が通過する際,塵が大気との摩擦により加熱され発光する現象。「メテオ」の観測では、流星の飛跡や明るさから流星塵の大きさを求めたり,回折格子をレンズの前に取付けて分光観測を行ない,流星塵の化学組成を調べる計画。

また,毎年決まった時期に現れる流星群は,流星塵の元となる彗星や小惑星(母天体)がわかっているので,流星群の観測結果から直接探査が難しい流星群母天体の特性を知ることができる。

ISSからの流星観測は,天候や大気の影響を受けず,定常的な観測が可能。プロジェクトでは,ISSの軌道予測に基づき,夜になるとカメラが自動的に観測を始める。ISSが地球を約90分で一周するうち夜側は約35分間なので,「メテオ」が流星観測を行なうのは一日あたり約560分間。

このプロジェクトにより観測データ数が飛躍的に増え,より統計的な流星科学研究が可能になることが期待されるとしている。観測された全映像データは,ISS上のコンピュータに接続されたハードディスクに保存される。

通信データ容量の制限から,全てのデータを地上に降ろすことはできないが,ソフトウェアにより流星を含むデータのみ切り出し,惑星探査研究センター内の運用管制室で,その日のうちに観測映像を見ることができる。流星映像はウェブ上でも公開する予定だとしている。

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