ソニー,細胞の「動き」を捉えるセルイメージングシステムを発売

ソニーは,細胞分析の手法として業界初となる,細胞の動きを非染色・非侵襲で定量評価する,動き検出技術を応用した新しいコンセプトのセルモーションイメージングシステム「SI8000シリーズ」を発売する(プレスリリース)。

発売日は,心筋細胞の収縮機能評価にフォーカスした「Cardioモデル」が2014年12月,心筋細胞のほか,がんの転移に関わる細胞の遊走や浸潤,神経細胞の突起伸長などの定量評価が可能な「Researchモデル」が2015年4月。価格はモデルやオプションにより2,000~3,000万円となっている。

近年,創薬,再生医療,個別化医療の領域では,iPS細胞やES細胞などの幹細胞に対する医学・生物学研究の発展により,薬効薬理試験や疾患の原因解明を,細胞を用いて行なう手法に注目が集まっている。

同社はイメージング技術を応用し,細胞の機能を評価する独自の『細胞の動き解析アルゴリズムMotion Vector Prediction Method (MVP法)』を開発し,システムに採用した。これにより,世界で初めてシステムとして細胞の動きを捉えることができる。

細胞の極微な動きをベクトルで捉えることで,その動きの大きさの平均値を求め,それによって定量的な評価が出来る。それを時間/撮影設定で自動撮影し,20種類以上のパラメータの組み合わせでオリジナルな解析が行なえる。たとえば,がん細胞の遊走速度(がん細胞が遊離し流れて他の細胞に転移すること)をそのままでの速度,薬品Aを使った場合の速度と比べることによって,その薬品の効き目が確かめることができる。

さらに,細胞の動きに特化したチューニングを行なうことで,精確かつ高速に細胞の動きを検出することができる。また,検出した動きの情報を用いることで,細胞の挙動を定量化するための様々なパラメータを算出することが可能。

また,通常の培養状態のまま細胞を撮影し,その動画をMVP法により解析することで,従来は実現が困難とされてきた,特殊な培養容器や染色試薬を必要としない細胞機能評価ソリューションを実現した。染色せず高速ビデオカメラで撮影することで,染色のための人手がかからない他に,染色することにより動きが変ってしまうという可能性や,長期間の観察で色が変ることを避けることができる。特に,創薬や再生医療の研究などで,細胞に対する染色を避けたい場合での細胞評価が可能になる。

同社ではこのシステムにより,創薬・個別化医療・再生医療領域において,細胞を含めた生体組織を対象とした研究に用いることで,従来では得られなかった知見が期待されるとしている。

例えば,心筋細胞など動きを有する細胞において拍動伝播を可視化することができるため,不整脈を引き起こすような細胞間結合の異常や薬剤による影響を検証することや,ヒトiPS細胞由来の疾患モデル細胞について,その表現型を動きの観点から定量評価するなど,細胞評価における多くの利用シーンを想定している。