東大ら,近藤状態によって散乱される電子波の位相のずれの観測に成功

東京大学,理化学研究所,仏Neel研究所,独Ludwig-Maximilians大学、独Bochum Ruhr大学のグループの研究グループは,独自に開発した2経路干渉計を用いて,近藤状態によって散乱される電子の波動関数の位相が90度ずれる様子を初めて捉えた(ニュースリリース)。

1964年に近藤淳によって初めて理論提唱された近藤効果は,電子スピンが関与する多電子の相互作用効果の中で最も代表的なものとして知られている。近藤効果は,局在スピンとそれを取り囲む多数の伝導電子との間の相互作用によって生じ,局在スピンの磁気が伝導電子との結合によって打ち消される現象(遮蔽)。

近藤状態の電気的な性質は,近藤状態に入射する電子がどう散乱されるかで説明される。局在スピンの遮蔽過程では散乱される電子のスピンは保たれるが,散乱される電子の波動関数の位相が90度ずれることが約40年前に予言されていた。しかし,その検証実験は技術的に難しく,現在に至るまで実現していなかった。

研究グループは,独自に開発した2経路干渉計に量子ドットを埋め込んで,この位相の90度のずれを初めて実験的に確認した。その結果の明瞭さと重要さから,この成果は固体の電子物性分野の歴史的業績のひとつに位置づけられるという。

この2経路干渉計は,電子の散乱位相を高精度で検出できるもの。今回,この干渉計の有用さが改めて実証された。また,この干渉計は,波動関数の位相を情報のリソースとする電子デバイスとなり得ることから,研究グループでは干渉を原理とする量子情報デバイスへの応用も期待できるとしている。

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