国立天文台ら,銀河同士が衝突した後に高い確率でガスの円盤構造を持つ銀河が作られることを発見

国立天文台で研究を行なう植田準子氏(日本学術振興会特別研究員)が率いる国際研究グループは,衝突の最終段階にある37個の銀河における分子ガスの分布を,世界中の電波望遠鏡の観測データを使って調査した(ニュースリリース)。

その結果,37個の銀河のうち30天体で分子ガスからの電波が検出され,その分布を描き出すことに成功した。30天体のうち24天体では,分子ガスが円盤状に分布していた。

今回の研究で,少なくとも近傍の宇宙(約4000万〜6億光年)では銀河衝突によって分子ガス円盤が作られるということが明らかになった。また電波のドップラー効果から,これらのガス円盤がそれぞれの銀河中心のまわりを回転していることもわかった。

さらに,分子ガスの円盤が見つかった24天体のうち11天体では,銀河の中心部に密集した星の集団(銀河のバルジに相当)よりも分子ガスの円盤の広がりのほうが大きくなっていた。

中には,天の川銀河の円盤に匹敵する大きさのガス円盤を持つ銀河もあった。衝突の最終段階にある銀河に高い割合でガス円盤が存在することが観測で直接示されたのは,今回が初めて。

今回の結果は,宇宙における銀河の進化を考えるうえでも重要な意味を持つ。近年の高感度観測により,遠方宇宙(約70億~110億光年)に存在する銀河は50~75%がガスの円盤構造を持つことがわかっている。

今回の観測の結果,銀河どうしが衝突した後に高い確率でガスの円盤構造を持つ銀河が作られることが初めて確かめられた。研究グループはこれについて,我々が住む天の川銀河のような円盤銀河の起源に迫る,重要な成果だとしている。

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