NHKは,超薄型・軽量で持ち運びに便利なフレキシブルディスプレイを実現するため,リン光材料を使った高効率な有機ELデバイスの研究開発を進めている。今回,デバイスの長寿命化と低コスト化を実現する技術開発に成功した(プレスリリース)。
有機ELデバイスの中で光を発する発光層は,ホスト材料とその中に分布する発光材料で構成され,ホスト材料は電気エネルギーを発光材料に受け渡す役割を担う。
一般的に,発光材料にはイリジウム等の希少金属を含む有機金属化合物が用いられているが,希少金属を含むため材料費が高く,デバイスの低コスト化が大きな課題となっていた。
今回,電気エネルギーを受け渡しやすいホスト材料を新たに用いることで,極めて少ない量の発光材料で長寿命な緑色のリン光有機ELデバイスを実現した。
従来のホスト材料(CBP)で寿命を長くするためには,発光材料量を6%以上にする必要があったが,新しいホスト材料(PIC-TRZ)の分子構造では,発光材料量1%でも従来の7倍程度の寿命が得られ,発光材料を大幅に低減できることからデバイスの低コスト化が期待できる。
NHKでは今後,赤色および青色発光のリン光有機ELデバイスについても同様の検討を進め,高効率・長寿命なフレキシブルディスプレイの早期実用化を目指すとしている。