埼玉大ら,光学式膜厚測定装置を組込んだマイクロマシン用静電塗布装置を開発

埼玉大学 とアイテーオーは,多くの電子デバイスの製造工程に用いられているレジスト膜の塗布速度の高速化・膜厚の均一性に対応するため,光学式で膜厚を大面積一括に高速する測定技術を確立し,これを組み込んだ静電塗布装置およびリアルタイム制御システムを開発した(ニュースリリース)。

低コストの成膜技術として期待されている静電塗布法は,『高粘度・低希釈濃度の材料の塗布が可能』,『塗布材料の無駄がなく低コスト』,『立体構造への平滑塗布が可能』,『数10μm 以上の厚膜化が可能』など他の塗布技術にはない特徴を有している。

そのため,既存塗布法では今まで実現できなかった,マイクロマシンの製造過程に用いられるレジスト厚膜の高精度成膜が可能な,静電塗布装置の開発が求められている。

膜厚測定は,一般的には触針式と光学式の両方の方法が用いられているが,前者は膜を傷つけるので,塗布装置に組み込む膜厚測定装置には光学式の手法を適用する必要がある。しかし,塗布法のように高速成膜技術に追従可能な高速な光学式膜厚測定装置の実現はこれまで困難だった。

研究グループはこれらの問題を解決するため①静電塗布法などの塗布プロセスに適用可能な高速かつ幅広領域の一括膜厚測定が可能な高輝度平行ライン光源②40mm 幅を一括で測定可能な2 次元分光器を用いた膜厚測定カメラ③塗布プロセス中にリアルタイムで膜厚を測定し,その情報を塗布条件にフィードバックできるオンライン膜厚制御システムを開発した。

①については,市販のコリメータレンズでは照明スポットが円型なので光量ロスにつながり,また,広い面積の膜厚を一括で測定するためには,広範囲かつ高強度の平行照明を実現する必要があることから,照明光学系の改良を行ない,平行ライン照明を実現した。

また膜厚測定には薄膜に高輝度平行ライン光源を照射したときの反射スペクトルを解析する必要があり,薄膜内部での多重反射によって膜厚と波長に依存した反射光強度を示す。通常の手法では測定点一か所毎で膜厚計算を行なうので,計算手法(高速フーリエ変換法)では膨大な時間が必要となり,塗布プロセスに追従することは難しい。

そこで今回の手法では40mm 幅の領域を一括で膜厚計算をする方式を採用した。そこで,アイテーオーで独自開発したアルゴリズム(計算時間の短いリファレンスフリーの手法)を用いることで,高速データ処理が可能な②を開発した。

静電塗布法でのレジスト溶液の供給はシリンジポンプを用いている。シリンジポンプの駆動速度で供給されるレジスト量を調整できることから,膜厚測定カメラから得られた測定結果をフィードバックしてステージ駆動速度をコンピュータ制御する,多種パラメータ設定機能を有する制御ソフトウエアにより③を開発した。

これにより,リアルタイムに測定された膜厚に基づいて塗布量を制御した場合,均一なレジスト膜を成膜することができることを確認した。また,4インチのシリコン基板に塗布したレジスト膜(膜厚:約20μm)では+5.2% /-5.6%の膜厚分布を得た。

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