横市大ら,血管と軟骨を利用してヒト軟骨の効率的な再生に成功

横浜市立大学と神奈川県立こども医療センターらの研究グループは,ヒトの耳介より採取した軟骨前駆細胞から,従来全く着目されていなかったアイデアで,ヒト軟骨を効率的に再生する手法を開発した(ニュースリリース)。

この研究では,まず,成体では血管のない単純な組織である軟骨においても,発生や再生の初期段階では血管が一時的に存在することを見出した。さらに,同研究グル-プが初めて同定したヒト軟骨前駆細胞と,臍帯より分離した血管内皮細胞を組み合わせて,血管様構造を有する立体組織を自律的に誘導することの可能な革新的な三次元共培養法の確立に成功した。

この方法によって生み出された立体組織は,免疫不全マウスの生体内に移植することで一時的な血管化が再現され,飛躍的な効率でヒト軟骨へと成熟することが示された。この研究により,軟骨のように単純な組織の再生においても,血管をはじめとする複数種の細胞間相互作用が重要であるという意外な知見が明らかになった。

研究グループでは今後,全世界で100万人以上存在すると考えられている頭蓋・顎・顔面領域の先天奇形や,外傷による組織の変形などの疾患治療に有益な,全く新たな軟骨再生医療の実現が期待されるとしている。

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