京大,連星中性子星合体過程の磁場増幅機構を解明

京都大学の研究グループは,理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」 を用いて,連星中性子星の合体およびその後の進化過程の新たな描像を示すことに成功した(ニュースリリース)。

2つの中性子星からなる連星中性子星は重力波の発生により合体し,ガンマ線バーストと呼ばれる宇宙最大規模の爆発現象を起こし,鉄より重い重元素の合成現場の候補としても注目されている。

連星中性子星合体からの重力波を直接観測できた場合,強い重力場における一般相対性理論の検証が可能になる。従って,連星中性子星合体は,各国で建設されている次世代の重力波望遠鏡の有望な観測ターゲットとなっている。

さらに,重元素合成を引き起こしている天体の候補でもあるため,連星中性子星合体の解明が求められており,理論,観測に加えて数値シミュレーションからのアプローチが進んでいる。

研究グループは「京」を用いて,中性子星がもつ磁場に着目し,合体とその後の進化にどのように影響を及ぼすかを,連星中性子星合体の数値的相対論磁気流体シミュレーションを世界最高の空間解像度で行なうことにより調べた。

その結果,連星中性子星合体過程における磁場増幅機構を解明し,合体後の進化過程を新たに描き出すことに成功した。従来は合体後形成されるブラックホール周辺の降着円盤内で磁場が増幅されるとされていたが,2 つの磁気流体不安定性によりブラックホールの形成前に磁場が増幅されることがわかった。

研究グループは,合体過程で磁場が有意に増幅することが示されたが,最終的にどの程度まで増幅されるかは今後の課題だとしている。さらに,合体により形成されるブラックホール‐降着円盤がガンマ線バーストを駆動するのかどうかを突き詰める必要があるとしている。

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