新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2006年度から島津製作所などと共に4年間実施したプロジェクトの成果をもとに,島津製作所は乳房専用PET装置「Elmammo(エルマンモ)」を製品化し,8月19日に薬事承認(製造販売承認)を取得した(ニュースリリース)。
この装置は,寝台部上部に直径185mmの検出器ホールが一つ開いているシンプルな構造であり,検査時にはうつ伏せで片側の乳房をホールに入れて撮像する。マンモグラフィとは異なり,乳房を挟む必要がないため痛みがない。また寝台の高さを乗り降りと介助のしやすさを考慮した670mmとし,うつ伏せでも姿勢を保ちやすいようにマットに硬軟ダブル素材を採用し,顔を乗せる部分にはくぼみを設けるなど,検査を受けやすいように工夫した。
画像解像度を上げるためガンマ線の検出素子を小さくし乳房の周りに円周状に近接してを配置,1.44mm×1.44mmという「臨床用PET装置として世界最小サイズ(2014年9月現在)」のガンマ線に対して高い発光効率を持ったLGSO(ケイ酸ルテチウムガドリニウム)シンチレータを採用することで,空間分解能1.5mm以下の高い解像度を実現し,乳房における薬剤分布の詳細な観察を可能にした。
片側5~7分間の検査中,乳房の痛みがないため被検者が静止し続けることが容易で,またうつ伏せ体位で検査できることで呼吸による体動の影響を受けにくいことも鮮明な画像を得られることに貢献している。高感度化したことで,全身用PET/CT装置よりも精度の高い検査を行なうことができるようになった。高精細な3次元断層画像が得られるので,MRIなどの形態画像との対比や融合によって,乳がんの解剖学的な位置関係を観察でき,またPET画像と病理データとの比較などにも利用が見込めるとしている。