国立天文台ら,活動銀河の高エネルギーガンマ線フレアにともなう電波増光を検出

国立天文台を中心とした国際チームは,日本のVERA(相対VLBIの手法を用いて,銀河系の3次元精密立体マップを作成するプロジェクト)や欧州VLBIネットワーク(EVN:欧州版VERA)を用い,活動銀河M87で発生した高エネルギーガンマ線フレアにともなう電波増光を検出した(ニュースリリース)。

M87は,おとめ座銀河団の中心に位置する巨大な活動銀河で,強力なジェットをともなう大質量ブラックホールが存在する。 明るいジェットをともなう活動銀河中心核として最も近い天体のひとつで,これまでに様々な周波数で多くの観測が行なわれてきた。ガンマ線フレアの発生も知られていたが,その位置や現象の詳細はわかっていなかった。

研究チームは,2011年2月から2012年10月にわたり,EVNとVERAのGENJIプログラムによって高分解能モニタ観測を行なった。 GENJIプログラムは,ブラックホールからのガンマ線放射メカニズムの解明を目標とした計画で,すでに複数の天体で成果を上げている。

今回の観測期間中,特に2012年2月から3月において,高エネルギーのガンマ線フレアが発生し,研究チームは,M87の中心部分における電波増光の検出に成功した。 観測された増光の様子は,高周波数ほど振れ幅が大きく,変化も急激で,速くピークに到達していた。一方で,過去にガンマ線放射の可能性が指摘されていた,中心から120pc(約390光年)ほど離れたHST-1という領域では,変化が見られなかった。

これらのことは,中心部にある大質量ブラックホールの近くでフレアが起きたことを示している。 また,中心の変化の様子や周波数によるタイムラグなどから,ジェットの見かけの速度を0.2c(秒速約6万km)未満と算出した。 この0.2cという速度は,過去のより明るいガンマ線フレアで観測された見かけの速度(1.1c)より小さいことから,研究グループはガンマ線の強度とジェットの速度に相関がある可能性も考えられるとしている。

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