東京工業大学の研究グループは,共役系高分子の1つであるポリフルオレン単一鎖からの電界発光の観測に成功した(ニュースリリース)。ブロック共重合体のミクロ相分離状態で見られるナノシリンダー構造の中に,ナノシリンダー材料と相溶性が良いポリフルオレンを導入することで,個々のポリフルオレン鎖を高密度に分離して実現した。
ポリフルオレンは優れた電導特性や青色発光特性を示すため,有機ELディスプレイや照明などの光電子デバイスへの応用が期待されている。しかし,駆動時間の経過と共に発光色が青色から緑色へ変化するという問題があり,効率の低下や駆動の不安定性につながっていたが,原因は明らかではなかった。
研究グループは,ブロック共重合体のナノサイズの垂直配向シリンダー構造の中に,個々のポリフルオレン鎖を閉じ込めることで,ポリフルオレン鎖1本1本が高密度に分離された薄膜を作製し,この薄膜に電極を付けることでEL素子を作製した。
個々に分離されたポリフルオレン鎖の電界発光を高解像顕微鏡で観察したところ,青色と緑色が可逆的に振動するものが存在することを発見した。また,この緑色発光は電界を印加した時のみ顕著に観測されることを見出した。さらに,緑色の電界発光の発現が,ポリフルオレン鎖中にトラップされた電荷によりポリフルオレン1本鎖の凝集が加速化されることで生じることを明らかにした。
研究グループではこの成果について,高耐久性の青色発光共役系高分子の作製に寄与するものであり,このような電界発光特性を示す単一分子鎖に関する研究結果は,単一分子を用いた光電子デバイスの実現に向けた一歩になるとしている。
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