東北大学と日立アロカメディカルの研究グループは,ある特殊な条件の超音波に血管新生作用があることを発見し,この研究成果を基に狭心症患者を対象とした超音波治療の医師主導治験を開始した(ニュースリリース)。
東北大学では約 15 年前から狭心症の虚血組織における血管新生を誘導する低出力体外衝撃波治療を開発・臨床応用を進めてきた。この低出力体外衝撃波治療は,2010年には厚生労働省から先進医療として承認を得ている。
しかし,衝撃波は空気の層では膨張する性質があるので,組織障害の可能性を避けるために,空気で満たされた肺に当たらないよう注意深い操作が必要だった。また,衝撃波発生装置の他に,照射位置を確認するための診断用超音波装置も必要なため,治療装置の小型化には限界があった。
そこで東北大学では,40 年以上前から心エコー検査や腹部エコー検査など世界中で使われており,その安全性も確立している超音波に着目し,超音波にも血管新生作用がないか検討を行なった。
その結果,ある特殊な条件の超音波を,虚血性心疾患モデル動物(ブタ)の心臓に照射したところ,虚血領域の毛細血管数が増加して心筋の血流や収縮力が改善することを確認した。また,超音波治療の効果は,東北大学が開発した上記の低出力体外衝撃波治療とほぼ同程度であることが分かった。
研究グループでは,この治療法は,診断で用いられる出力範囲の超音波を用いた低侵襲性治療であり,今後の発展が期待できるとしている。
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